#53 役割 ページ7
出水side
「なんか、おれにもよくわかんねーんだけど」
太刀川さんは「そうなのか？」とおにぎりをかじる。ビニールの剥き方ぐちゃぐちゃだな。
「太刀川さん師匠なんだし、なんとかしたりしないんですか？」
「あー昔からそういうのはないな。瀬野が頼ってきたことはないし。そもそも俺は師匠じゃない」
ふーん、とおれは返す。そういうものなのか。まあ瀬野が自分から誰かに頼ることは滅多にないだろうし、太刀川さんも悩み相談って柄じゃない。
じゃあ瀬野にとっての相談相手って誰なんだろう。と思って、すぐに一人思い浮かんだ。
……なるほど、だから最近不安定なのか。
「あー……めんどくせ」
おれは頭をかいて、思考を放棄するように呟いた。
「けどお前なんだかんだ言いながら、いつも結構瀬野のこと気にするよな」
太刀川さんに視線を向けると、軽く笑った顔がある。
「そうですか？」
肩のところにある瀬野の頭を見る。
「……まあ、こいつほっとくと何するかわかんねえとこあるし」
おれがこいつと顔見知りになって間もない頃。おれが太刀川隊に入ったばかりの頃。太刀川さんは知らないだろうけど、多分あの頃があいつの人生最初の挫折ってやつだろう。
元々頭も良くてセンスもある瀬野だ。ボーダーに来る前までも、それなりに上にいた人間だったんだろう。
「壊れよう知ってるからほっとけねえだけですよ」
そう言ったら太刀川さんはいつもより柔らかい笑みで笑った。なんだかすごく大人びて見えた。
「お前はそれでいい」
太刀川さんは笑ってそれだけ呟くと、二個目のおにぎりのビニールを剥き始めた。なんでそこから開けるんだよ。
部屋の時計を見たら学校まではまだ時間はありそうだ。
鮭のおにぎりをかじったら、海苔が少しふやけていた。
◆
Aside
目を開けると殺風景な天井があった。
首を横に向けると今度は逆に生活感で溢れる空間。太刀川隊の作戦室。
「…………何時だ今」
レポートが完成してからはあんまり記憶がない。
起き上がるとパサリと掛けてあったジャケットが落ちた。一緒にひらりと紙切れも落ちた。
『担任には言っとく。あんま無理すんなよ』
思わず二度見してしまう。文面からして出水だろう。出水からこんな気遣いの言葉が出るなんて。
……そんなに自分は情けない様子だったんだろうか。
「…………」
ぼすんとソファに再び身を投じる。軽く目を閉じたらまたすぐにでも眠りに落ちそうだった。
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神楽(プロフ) - 瀬野ちゃんが前向きになっていくのが見ていてドキドキします！出水とか米屋とかの絡みが好きです！更新待ってます‼︎ (11月18日 10時) (
レス) @page12 id: 18a9383861 (このIDを非表示/違反報告)
朝希 緑(プロフ) - 続き読みたいです！ (2018年7月15日 15時) (レス) id: c6b5a5d14a (このIDを非表示/違反報告)
雫鶴鳩 - 面白いからこうしーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん (2017年10月7日 17時) (レス) id: 86c88d0ffc (このIDを非表示/違反報告)
兎亜(プロフ) - 表現の仕方が様々で、どんどん読み進めてしまいました。心情や状況が遠回しながらもわかりやすく、読みやすかったです。更新楽しみにしてます……！ (2016年10月14日 23時) (レス) id: 930da2fbf6 (このIDを非表示/違反報告)
ちゅら玉 - 遅くなったんですが、続編おめでとうございます!瀬野さんの小説を楽しみにしながら更新を待っています。これからも応援しています。 (2016年5月24日 6時) (レス) id: 8312e057f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瀬野
| 作成日時：2016年3月31日 23時
