#51 小惑星 ページ5
Aside
「遠征ってどんな感じ?」
そう訊いたら目の前の出水は「はあ?」と声を上げた。
ぱらぱらと分割されたトリオンキューブを宙に散らして、それが一気に飛び出して爆発する。
私は片目を細める。爆風と砂埃が私の髪を強く荒らした。
「なにお前遠征行きたいの?」
バラバラになったトリオン兵の群れの前で出水が言う。
「単に気になっただけ」
「ふうん」と出水は返す。空は深い紺。
いい感じの大きさの瓦礫の上に尻を引っ掛けて、出水が手をグーパーしながら口を開いた。
「別にやることはあんま変わんねーんじゃねーの? 土地と相手とトリガーとかが知らねーもんなだけで」
「ふうん」と今度は私がそう返す。
「つーか、お前んとこ遠征行ったことなかったんだっけ?」
「ないよ。試験は受けてたけど、結局最後まで通んなかった」
通っていたら何か違っただろうか。あの人は今ここにいただろうか。
「へー? 通ってもおかしくなさそーなのにな」
「どうだろ。判断基準知らないし」
腰に差した弧月の柄の先に手を触れる。
『
警報が聞こえて空間に黒い穴が開く。トリオン兵が出てくる。
モールモッドが1匹こっちに向かってきたので弧月を振る。黒い煙が出て崩れる。
振り返ると、大きなトリオンキューブ。
立方体がさらに細かい立方体になり、白く発光しながら紺色の宙に舞う。
弾かれたように流れて、モールモッドの外甲に触れた瞬間破裂する。
バババババババンッ、といくつもの爆発で砂煙が舞って、しばらくして晴れる。
「? なんだよ」
砂煙が晴れて見えた色素の薄い髪の色がこっちを見る。黒い隊服は闇に同化して見づらい。
「出水の戦闘って、」
深夜の空に、警戒区域はあかりひとつ灯ってないから、トリオンの光はよく映える。
「……派手」
「は? なにそれ褒めてんの?」
「褒めてない、うるさいなって思っただけ」
「はあ? お前だって旋空使ったとき結構うるさいだろ建物壊すし」
私が物言いたげに瓦礫に視線を送ると、出水は「? なんだよ」と眉をひそめる。
「……なんかお前今日変」
私は出水を見る。
「変って」
「いつにも増して面倒くせえわ」
ボーダーに戻ってきて、初めての雨だったのだ。色々、思い出してしまう。
「……ウチにはシューターはいなかったな」
そう呟いたら出水からため息が聞こえたけど、文句が帰ってくることはなかった。
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神楽(プロフ) - 瀬野ちゃんが前向きになっていくのが見ていてドキドキします!出水とか米屋とかの絡みが好きです!更新待ってます‼︎ (11月18日 10時) (レス) @page12 id: 18a9383861 (このIDを非表示/違反報告)
朝希 緑(プロフ) - 続き読みたいです! (2018年7月15日 15時) (レス) id: c6b5a5d14a (このIDを非表示/違反報告)
雫鶴鳩 - 面白いからこうしーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん (2017年10月7日 17時) (レス) id: 86c88d0ffc (このIDを非表示/違反報告)
兎亜(プロフ) - 表現の仕方が様々で、どんどん読み進めてしまいました。心情や状況が遠回しながらもわかりやすく、読みやすかったです。更新楽しみにしてます……! (2016年10月14日 23時) (レス) id: 930da2fbf6 (このIDを非表示/違反報告)
ちゅら玉 - 遅くなったんですが、続編おめでとうございます!瀬野さんの小説を楽しみにしながら更新を待っています。これからも応援しています。 (2016年5月24日 6時) (レス) id: 8312e057f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:瀬野 | 作成日時:2016年3月31日 23時