#47.5 静かに夏 ページ1
Aside
「話は聞いていると思うが、暁隊員がトリガー数本を持ち去り、
薄暗い会議室で城戸司令の重い声がする。
「我々上層部はこのことを隠密に処理することを決定した。したがって、君達にはこのことは他言しないようにしてもらいたい」
ずっと冷たい床を見ていた。隣に立った先輩達が了承の返事を重く返した。
「……瀬野君、」
少し顔を上げると、城戸司令と目があった。
「……わかりました」
口を開いてそれだけ音にする。
城戸司令がしばらく私に視線を向けていた。それからそれを全体に向けて、言う。
「会議を終了する」
◇
『大丈夫か……？』
最近よく訊かれるようになった。
心配されるのはいい気分だとは言えないが、跳ねのけるのも、誤魔化すのも、どうするのも億劫だった。
あの日から数日は雨が続いた。梅雨はとうに開けたはずだった。
あの人のことは、表向きには単に隊務規定違反を起こしてボーダーを止めたということになっている。
あの人は結構しっかりした人だったから、周囲も疑問がないわけでわないだろうが、私には誰1人としてあの人のことは尋ねなかった。先輩達は訊かれたかもしれない。
米屋もなにも訊かなかった。
「よー、アイス買ってきたけど」
誰に聞いたのか知らないが、夏休みに入ると度々私の借りているマンションにやってきた。
「お前昨日補習だったんだって？ 奈良坂に聞いた」
夏休み。任務のおかげで不足した出席日数を得るための補習と、ボーダーの任務。それ以外は部屋にいた。
米屋が慣れたようにキッチンの冷蔵庫を開ける。それをキッチンの入り口に立ってぼーっと見ていた。
「……なんか食べたいもんとかねーの？」
「……夏は食欲湧かない」
「…………」
米屋が数日前と変わらない様子の冷蔵庫をしばらく見つめて、ぱたんと閉めた。大丈夫か、と米屋が訊いたことは一度もなかった。
「……お盆は帰って来いって」
「……？ ああ、親？」
「そう」
ベッドに座ってアイスを食べる。
「帰んの？」
「任務入れた」
ふーん……と米屋はなにも訊かない。
「解散して、どうしよう」
先輩達はちゃんと進んだのに、私は隊が解散してもまだどうすればいいか決めかねている。先輩達から、心配の電話も来ている。
米屋はなにも言わない。私も、答えが欲しくて呟いているわけではない。
夏の青空に入道雲。それを一筋の飛行機雲が、突っ切っていた。
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神楽(プロフ) - 瀬野ちゃんが前向きになっていくのが見ていてドキドキします！出水とか米屋とかの絡みが好きです！更新待ってます‼︎ (11月18日 10時) (
レス) @page12 id: 18a9383861 (このIDを非表示/違反報告)
朝希 緑(プロフ) - 続き読みたいです！ (2018年7月15日 15時) (レス) id: c6b5a5d14a (このIDを非表示/違反報告)
雫鶴鳩 - 面白いからこうしーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん (2017年10月7日 17時) (レス) id: 86c88d0ffc (このIDを非表示/違反報告)
兎亜(プロフ) - 表現の仕方が様々で、どんどん読み進めてしまいました。心情や状況が遠回しながらもわかりやすく、読みやすかったです。更新楽しみにしてます……！ (2016年10月14日 23時) (レス) id: 930da2fbf6 (このIDを非表示/違反報告)
ちゅら玉 - 遅くなったんですが、続編おめでとうございます!瀬野さんの小説を楽しみにしながら更新を待っています。これからも応援しています。 (2016年5月24日 6時) (レス) id: 8312e057f6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：瀬野
| 作成日時：2016年3月31日 23時
