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「あ、…ふふ、作業終わったん?」
リビングでテレビを眺めていた彼女がこちらを向く。
その顔に思わずぐっと来てしまうのを堪え、
『おぉ、まぁまぁやな。』と返しながら冷蔵庫を漁る。
「せんらくん」
呼ばれたから振り向いた、特に何も変わったことはしていない。それなのに
「…なんか疲れてる?」
あぁ、なぜ彼女はここまで俺を理解しているのだろう。
『んー?そうかなぁ、疲れてるように見える?笑』
なんて、笑いながら聞けば
「なんか、わからへんけど…泣きそうな顔してる…気がする?…ちゃうかったらごめんな?!」
とか、彼女お得意のヘラっと笑った顔で言ってきて、またぐっとこみ上げる。
『いや、…はは、何でもないはずやねんけどな〜…』
明らかに元気なく返してしまった。
やばい。と思ったときにはもう彼女はこちらをじっと見ていて、少し考え込む姿勢をする。
どうすることもできずそのまま突っ立っていると
「んー、……えっと、…ふふ、…おいで?」
少し照れながら腕を広げてくれた彼女に、吸い寄せられるように抱きついた。
『…っ、ごめ…ん…』
出てきた声は本当に自分の声か疑うほど弱々しくて恥ずかしさもこみ上げる。
「大丈夫。大丈夫やで。話したくなかったら話さんでええから。背中擦るくらいなら、私もできるんやで?」
そう言いながら背中をゆっくりやさしく擦ってくれる彼女に、堪えていたものが遂に耐えきれず溢れだす。
『ごめんっ…ほんま、っ…普段は、大丈夫やねんけどっ…笑…ちょっと、…しんどい、…笑…ごめんっ…ぅ、…っく…』
ただ涙を流す俺をただ抱きしめてくれる彼女。
時々、「大丈夫やで〜」とやさしく言ってくれて、その言葉に心から安心して、次第に落ち着くことができた。
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作者名:sio | 作成日時:2021年8月31日 0時