高く飛んだその後 (ページ9)

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｢いつか美羽さんに担当してもらえるように、私も頑張ります。｣

そんなたわいない話をしながら、コーヒーとクッキーを楽しむ。
ふと会話が切れたタイミングで、飛雄くんを見ると、さっきまでのように分析内容を声に出すことはせず、ただやっぱり試合映像に集中していた。
多分、あの様子だと私たちの会話は聞いていないのだろう。コーヒーとクッキー、いらないのかな。

｢2人ってどこにデート行くの？｣

その視線を感じ取ったのか、コーヒーを一口飲んで質問してきたのは美羽さんだ。

｢デート……そうですね、あんまり外に出かけるとかはないかもしれません。｣

目立っちゃうので。と言うと、そんな巨人カップルなかなかいないもんね。と美羽さんは笑う。
本当にその通りで、特に見るからに筋肉質かつ高身長で何で隠そうともかっこよさが滲み出てしまう飛雄くんが問題なのだ。
一緒に歩いているのが私なんかだとバレた暁には後ろから飛雄くんファンに刺されてしまうかもしれない。
それに──……

｢でも、別に隠してるわけじゃないんでしょ？｣

｢そう、ですね。｣

じゃあいいじゃない、堂々としてれば。と言う美羽さんの意見はもっともだ。けど、

｢公表する場面なんてなかなかないですから。
それに多分、今の環境の方がバレーには集中しやすいのかなと思って。｣

｢どうして？｣

｢飛雄くんはかっこいいから、純粋な女性ファンも多いし、このことがバレて騒がれたりしちゃうのもどうなんだろうなぁ、とか。
大事な時期の環境変化って結構大きいので。｣

｢トップアスリートの考えがあるわけね。｣

ふぅ、と息吐いて美羽さんは頬杖をついた。
そのままついと目だけで私を見上げ、口を開く。

｢Aちゃんは大人だね。
彼氏がキャーキャー言われてても特に心は乱れない感じ？｣

｢、それは……その、まぁ……み、乱れそうにはなりますが……｣

事実、可愛らしい女の人もたくさんいるものだから、心配になることは多々ある。けど、それは私のわがままで、多少我慢すれば済む話だ。
飛雄くんは学生時代から変わらずマメに連絡をくれるし、会ってもくれる。私を大切にしてくれていることはとても伝わっているのだから。