高く飛んだその後 (ページ14)

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「うまい。」

「ありがと。」

飛雄くんはいつも感想を言ってくれる。決まってだいたい「うまい。」だ。本心、だと思う、多分。今回の鶏の胸肉を使った棒棒鶏とサラダとお味噌汁は、我ながら上出来だと思うし。

同棲……つまり、一緒に暮らすということは、相手の新たな一面を知る機会にもなる。だからこそ、うまくいかない可能性もあるかもしれないと思ったけれど、私たちの場合は比較的スムーズだった。
美羽さんの言う通り、近い将来海外進出を考えているからこそ、この2人の時間を大切にしたいと思う。それは飛雄くんも私も同じ気持ちだった。

「駅前にデケェ広告出てるらしいな。シルエットにもこだわったニュータイプウェア。」

「うっ……最新情報ありがとう。日向くん？」

「あぁ。」

夕飯は私と飛雄くんの雑談が1番多い時間だ。
写真も送られてきた。と、飛雄くんが振ってきた
話題は私がモデルを務めたウェアについてだった。なんとニュータイプウェアの発表でも私をモデルとして起用してくれたのだ。まさか2度目があるなんて思ってもいなくて、またしても椅子から転げ落ちそうになった。
そして、2度あることは3度ある、なのか。つい最近別ショットの撮影に挑んできたところだ。
やっぱり注目されるのにはまだまだ慣れなくて、こうやって情報を共有されるのは少し気恥しく思う。

「次の休みの日見に行くか。広告。」

「エ、」

ず、とお味噌汁をすすり、飛雄くんは言う。まさかの提案に固まってしまった。
確かに大きな広告にしてくれたのは嬉しいし誇らしい気持ちはある。飛雄くんからのお誘いも嬉しい。俳優さんやモデルさんが自分の広告の前で写真を撮る様子がよくあるのも知っている。
けど、わざわざ私レベルの若手ぺーぺーアスリートがそんなことしていいのだろうか。否、羞恥心の方が勝る。
それに、せっかく飛雄くんと休みが合っているのにそんなところに行くなんていうのはどうなんだろう。せっかくだったらもっとちゃんとしたお出かけの方が……

「冗談に決まってんだろ。」

「……え、……もう！わかりづらいんだよ飛雄くんの冗談！」

ぐるぐるぐるぐる。考えていたのが伝わったのか、ハナからそのつもりだったのか。飛雄くんはもぐもぐとご飯を咀嚼しながら提案を撤回した。