第66話:物語のおわり ページ35
第66話
春高3日目。新山女子は無事2試合とも勝利を収めて、次の日へとコマを進めた。
簡単に言っているけど、これは本当にすごい事で、先輩たちの強さを改めて感じて尊敬した。
安定した試合運びやチームワーク、個々の実力。女王たる所以を春高という舞台でまざまざと示しているのは圧巻だったし、誇りすら感じた。
試合は終わったが、だからこそ私たち下っ端は明日に備えて今からが本番だ。
「あ!」
明日戦う可能性のあるチームの視察で置いていたカメラを回収し、新山女子の応援席へと戻ろうとしていた時だった。
貼りだされているトーナメント表に気づいて駆け寄る。
烏野vs音駒は、烏野が勝利を収めていた。
そうか、烏野は音駒に勝ったんだ……。小さく胸の前でガッツポーズをしそうになって、でもそれ以外の複雑な気持ちも相まって静かに腕を下ろした。
勝負の世界は残酷で、だからこそ面白い。
必ず、どちらかが勝ってどちらかが負ける。音駒は特に切磋琢磨したライバルだからこそ、いろんな想いが込み上げてきた。
「……」
それはそれは熾烈な争いだったことだろう。きっと家に帰ったらお父さんたちが録画してくれているだろうからそれを観よう。否、もしかしたら飛雄くんや日向くんがそれよりも先に見せてくれるかもしれない。
そう思いながら勝ち上がった烏野のラインに沿ってトーナメント表をなぞった。
「あれ……」
音駒に勝った烏野の次の対戦相手は、鴎台。
烏野の線は、そこで途絶えていて──つまりそれは、烏野の負けを意味していた。
どきんと心臓が高鳴り、ひやりとする。
慌てて携帯を取り出してメール画面を開いた。
そういえば今日は1度も携帯を見ていない。きっと飛雄くんからいつものようにメールが着ているはずだ。
「……」
案の定、来ていた。2件。
1件は、朝私が送ったメールに対する返事。
そしてもう1件が、鴎台に負けた事を記した内容だった。
「烏野だっけ。あのちっさいのが途中退場しなかったら行けてたかもだよな。」
「体調不良でしょ?春高バレーって、こういうとこ残酷だよね。」
その時後ろから聞こえた誰かの声に振り返る。
でも多分、話しながら歩いていただけのようで、その会話をしていたらしき人達はもう見当たらなかった。
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しおり(プロフ) - りんさん» ありがとうございます!ネタ考えます🤔 (2022年11月30日 8時) (レス) id: 0e2f0640dd (このIDを非表示/違反報告)
りん - マジで面白いです!いつも楽しみの更新待ってます (2022年11月27日 20時) (レス) id: e34fa82e55 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しおり | 作者ホームページ:http://nanos.jp/amakusa40/
作成日時:2022年10月10日 21時