黒い騎士 (ページ36)

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軍勢が急に行動を変えた理由としては、王都周辺の道を封じたからだという可能性が高い、と。新しい道を拓いて来たって事だ。

「それで、今その山の所に防衛陣を敷こうとしているんだけどね」
「なにか問題が起こりましたか？」
「先遣隊からの連絡が途絶えちまったのさ」
「…それって、まずいんじゃないの？」
「ああ。であるからして、至急救援に向かって欲しいのじゃ」
「案内には、このオルデルがつく。頼まれてくれないかい？」
「……そこってどれくらい寒い？」
「とんでもなく寒いよ」

嫌そうな顔してるな、ユーリ。まあ確かに義勇軍も雪上戦闘の経験が豊富とは言えないからな。それに油断してるとあっという間に寒さでやられるとか。

「あのあたりは、それなりに詳しい。ワシの言うとおりにすれば、死ぬことはなかろうよ」
「はい。よろしくお願いします」

装備を整える所から始まる。
まずは服から。雪象、なる生き物の毛皮で作った服が一番なんだと。雪山に生息してる象の一種で、毛皮は分厚くて寒さに強い。大きそうだから一匹からでも何人分かは作れそうな感じがするな。象だし。
……あ、何違うの？店に売ってるやつを買うんだ。僕ぁてっきり雪山に生息しているそいつらを狩る所から始まるのかと。
ただ、店でもあまり蓄えは無いという。黒の軍勢の影響で雪象が減ってしまったのが原因とかなんとか。

「寒さ対策なら、別の方法もある」
「ホント！？どんな方法なの？」
「うむ…まあ、オヌシらなら教えても良いか。実は、温石という石があってな」

　

持ってればマナを吸収して暖かくなる石だけど、採掘をしないといけないんだと。１人２、３個あれば足りるとの事なのでちゃっちゃと集めて戻った。少し戦闘もあったけど。

準備は整ったので早速雪山に乗り込む。

「オヌシら、温石は大丈夫か？」
「この石、あったかいわよねー。むしろ暑いくらいよ」
「本当は土妖精さんだけの秘密の石なんだそうですよ」

むやみに取られてしまったら彼らが困ることになるから、らしい。
あとは雪の上での歩き方だけど……。マリナとカインが雪でびちょびちょになってた。

「…これを、靴にくっつけてみるのだ。靴だけにな」
「あ、う、うん……。輪っかの中に棒と紐？なにこれ？」
「棒の上に、靴の裏を置くようにしてな。紐で靴に縛りつけるのじゃよ」

接地面積を大きくして、雪にかかる重さを分散させる事で自分が雪に沈むのを防ぐ、と。なるほど。