黒い騎士 (ページ28)

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「ユーリさんは、誰かの命を犠牲にしてなにかを為そうとするようなひとじゃありません！」
「なにかを犠牲にしてでも奪い返したいものがある」
「そんなのはただの傲慢です！」
「…お前になにがわかる」
「わかりたくありません！！それに、あなたはこの世界のクロニクルの力も使うとおっしゃいました。それが意味する事に考えが及ばないとでも思っているのですか」

この世界に起きた取り返しのつかない悲劇をなかったことにできる。

誰が頼んだ、と叫ばれた。

「私はイヤです。ユーリさんや、皆との出会いがなかった事にされるなんて……。絶対にイヤです！！」

でも僕の世界ではその出会いが全て無駄になった。
なかったことになった。

僕の世界のフィーナはそんな事叫ぶ事もできなかった。自分の意志を叫ぶ事もできなかったんだよ。

「…………？」
「…それが、貴様の選択か」

剣を抜いて走る。

振り上げた剣がユーリに止められた。

……よかった、原作でこういう流れだったからフィーナへ斬りかかったけど…間に合わなかったらどうしようかと思ってた。

「……貴様か。この世界のユグドの仕業だな…。余計な事を」
「ユーリ！」
「来てくれるって、信じてました」
「こんな所まで追ってくるとはな…」
「お前がなにをしようとしているのかはわかった。でも、オイラはお前のために死んでやるほどお人好しじゃない！」

お人好しじゃない？嘘をつけ、お前は優しいんだ。十分お人好しだよ。
お前だけじゃなくて義勇軍全体ががお人好しの集団なんだが。

今日ここで終わらせるよ、とピリカが叫んだ。
ユーリと斬り合う。

因子が、体の中に入ってくる。
自分が人ではなくなっていくのが分かる。
魔神になっていく。

「感じるぞ、貴様から私に流れてくる力を。感じるだろう？怒り、悲しみ…絶望を。……そのまま絶望に飲まれて貴様は死ね！」

ぎり、と歯を食いしばって睨んでくるユーリ。

「…っ！」

危ない、仮面が跳ね飛ばされる所だった。

それから弱点か何かだと勘違いでもされたのか、顔ばかり狙ってくるようになった。やめてくれ頼むから。本気で。そこだけはやめて。

ちり、と首筋に何かが走った。
嫌な予感がしたので左に避けたら、ピリカが針を持って飛んできていた。

……原作で……ピリカが戦いに参加なんて、していたか…？

「ユーリ、今だ！！」
「…………ぁ」

避け、きれなかった。

仮面が空を飛んだ。