黒い騎士 (ページ2)

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僕……いや、”彼”が。

僕が成ってしまった”彼”が、「黒騎士」と呼ばれ、本物(と仮定する)の前に立ちふさがるはずだったとなるのなら。

僕の仲間は。

全員。

「…………死ぬのか？」

義勇軍の皆も。
副都の皆も。聖都の皆も賢者の塔の皆も湖都の皆も精霊島の皆も九領の皆も。

全員。

「……嘘だろう？」

でも。
考えてみれば。
王都の決戦以外で、”彼”と主人公である”彼”の違いは無かったはずで。

”黒騎士”となる”彼”である可能性なんて、ありえない、とか。
その考えこそありえないことに今気づいてしまった。

今。

もう、何もかもが遅いこの時に。

　

　

　

戦って、走って、走って、走って、戦って戦って応急処置だけして食って走って走って戦って走って。

城に、ボロボロになりながら、でも五体満足でたどりついた。

全員死んでいた。

黒の王の前で。

彼ら彼女らの死を嘲笑う王に。

この世界に来て始めて、憎しみという感情を持った。

「世界が滅ぶより前に…！お前は、お前だけは！！！！！僕が殺してやる！！！」

　

　

　

　

　

　

―――この世界にある、最後のひとつだった命が、消えた。

世界が…滅ぶ。

燃える。

黒色に染まる。

……もう、どうでもよくなった。

フィーナは死んだ。
カインも、ミシディアも、マリナも、ピリカも。

全員、全員。

死んだ。

彼らの近くへ行って、地面に座る。

フィーナの前髪を整える。
本当は血も拭ってあげたいところだけど、生憎きれいな布は持ち合わせていないんだ。

「…………なァ……皆、聞いてくれよ。」

僕は、本物の”彼”なんかじゃなかったんだ。

”彼”みたく強くなれなかった。強くなろうとする努力はしたけれど。それでも”彼”の実力に届かない、なんてのも、分かっていたけれど。

あるいは、僕が”彼”でなかったことなんてとっくのとおに知ってたのかな。
黒の王に、言われたのかな。教えられたのかな。

あァ…王は、僕を見て、ニセモノだなんて言ったからなァ。知ってたんだろう。言われたのか？

なあ。

「……ごめんな。」

死なせてしまって。

ごめんな。

　

　

　

フィーナが持っていた、今はもう真っ黒に染まったクロニクルが光った。