第8話 ページ10
「起きろ」と言う声と共に、痛くは無いがぺちぺちと頬を叩かれている感覚。
もう少し眠っていたいのに強制的に起こされる事に唸って抵抗するが「撮影！」と大きい声を出されて目を開けた。
そういえばここは家じゃなかった、とAは大きく欠伸をする。
「やーっと起きたか」
『…あれ？キヨ居んじゃん』
「集合時間から2時間経ってりゃ流石に居るわ」
「スヤッスヤだったねぇA。また寝てなかったの？」
『まぁ、ちょっと。ラーヒーの布団が気持ちよくてぐっすり寝ちゃった』
「ほんとー？良かったあ」
ぐっと体を伸ばしてソファに座る。
時間をロスしているので、撮影誰からだっけと早速軽い打ち合わせ。
キヨとフジのチャンネル用に2本。時間に余裕があればこーすけのチャンネル用に1本の予定。
元々友達間の緩いものなので時間内に絶対、という訳では無い。
キヨがカメラをオンにしてゆるっと撮影が始まった。
「お前ら相変わらず冴えねーな」
「いきなりｯ！？」
動画モードのキヨが唐突にそんな事を呟いて、反射でフジが反応する。
それにこーすけが便乗して、ヒラはそんなやり取りを笑って。
自分はどう会話に入ろうかとボーッと4人を見ている。
「お前まだ目覚めてねーの？」
『ん？』
「撮影始まってんだぞ」
一番巫山戯ている癖に一番ストイックな男、キヨ。
ストイックさは昔程でも無い上に元々慣れた相手にはこのぐらい荒い態度だが、眠いAは『起きてますけど』と自分でも驚くぐらい反抗的な声が出た。
沈黙になりかけた空気を察したキヨが、グイッと目の前にやって来て、Aをカメラから隠すように立った。
「いやぁね！コイツまた不眠症になったみたいで」
『ちがいますけど』
「違わないです。さっきまで寝てたのに顔起きてねーもん」
『起きてますけど』
最早反射で答えている為、段々と自分でも何を話しているのか分からない。
4人の何時もよりハキハキとした声に撮影中だと気合いを入れ直そうとしても瞼は重くなっていく。
このまま眠ってしまったらキヨに怒られる。
それだけは、と思いながらもついに隣に居るヒラの方へ体重が乗った。
「え？マジ？」
「寝ちゃったよ？A」
「あー…っと、ちょっと待て？」
予想だにしない出来事に、大きくツッコミを入れるのを忘れ頭を抱えるキヨ。
「コイツ活動何年目？」
「14年目入ってます」
「撮影中ガチで寝るかね？」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 67人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：憐
| 作成日時：2023年8月18日 13時
