友人4人と俺の話 (ページ4)

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第4話ページ4

あれから女性は諦めること無く何度も話し掛けてきて、しまいには以前一緒にキヨの話をしていた同僚と思わしき人達までやって来ていた。
ほら、言わんこっちゃない。
口が軽すぎるんだこの人間は。
定時で上がって帰る時まで追いかけて来た女性達に内心イライラしながらも、今日で最後だから我慢しろ、と耐えてきたA。
別れ際に活動者に対する距離感について説教でもしてやろうと思った矢先に、仕事終わりに撮影の為合流予定だったフジから迎えに来たと電話が入った。
もう全て最後だしいいか、と彼女達に一言入れて電話に出る。

『もしもし？』
「駐車場着いたよ～」
『今から行くわー、そういやお前キヨのコントローラーパクった？』
「え？あぁ、それならさっき連絡したよ？ぶん殴るって言われた」
『学習しろよ本当。んじゃあもう出るから一旦切るわ』
「はいはーい。待ってるね〜」

まだあまり人が居ない会社のロビー内がシン、と静まり返る。
近くにいた女性3人には、電話越しだがフジの声も聞こえただろう。

『…そういう訳で、友達が待ってるので帰ります』

身内のテンションから淡々とする態度に戻ったAに、女性達はぽかんとする。
そして、声を掛けてきた女性が意を決したように前に出てきた。

「あの！私、最俺のファンで…まさかこんな所で会えるなんて思ってなくて…」

「なんか始まった」と思ったが、自分達の視聴者であるなら適当に対応するのは良くないなと黙って話を聞く。

「握手してください！」

こんな会社内の静かな場所でやめてくれ。受付の人が凄い見てるから。
そう思いながらも、差し出される手が震えている事に気付いて無碍にも出来なかった。

『いつもありがとうございます』

ふわりと微笑んで女性の手を握ると、見てわかる程顔を赤くして照れている様子。照れるのはこっちである。

『あの、俺の事は他の人には言わないでね？シンプルに恥ずかしいから』
「は、はい！」
『あと実況者ってビビり多いから、あんま無闇矢鱈に追い掛け回しちゃダメ』
「すみません…」
『分かればよろしい。それじゃ、友達待ってるから』

ヒラヒラと軽く手を振って会社を後にした。
駐車場に着き車に乗って早々両手で顔を覆い隠し、先程の説教じみた自分の対応が恥ずかしくなって身を投げたくなっているのは言うまでもない。