箱入り少女 King&Prince (ページ3)

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3.空っぽページ3

私の父は、ジャニーズ事務所のトッププロデューサーで

事務所の社長であるジャニー喜多川社長の右腕として、芸能界の第一線で活躍していた。

父親が仕事人間といえど、私はそんな父を嫌っていたわけでは無くむしろ尊敬していた。

いつも父の仕事場にくっついて行き、私もいつかはあの人みたいになるんだと

仕事をしている姿を見ながら常に思っていた。

スタッフをまとめるリーダー性も、タレントの本質を見抜く才能も、

小さい私は目を輝かせながらそんな光景をずっと見続けてきた。

…けれど、それは決していいものばかりではなかった。

タレントのスキャンダルやライブがあったときなどは、私は事務所に預けられ

一カ月近くも父の顔を見ない日々がよくあった。

そして私が10歳の頃、父は過労で死んだ。

悲しくないといえば嘘になるが、私の相手をしてくれるスタッフやジャニーズの皆が居たから寂しくはなかった。

身寄りがなくなった私を引き取ってくれたのは社長であるジャニーさん。

皆が傍に居てくれた。ジャニーさんも私に居場所を与えてくれた。

そう、寂しくなかったんだ。

.

「ジャニーズは、これからもずっと君の居場所だ」

そう言い残し、逝ってしまったジャニーさんを見るまでは…

.

「―――…いらっしゃいませー」

懐かしい人物と逢ったせいか、色々と昔のことを思い出してしまった。

別に私は特に自分が不幸だとか思ってない。むしろ幸運というべきなのだろう。

大きな事務所の社長であるジャニーさんが亡くなり、その財産の一部を私が相続した上に、

ジャニーさんが暮らしていた高層マンションの一室に、今は私が住んでいる。

そしてそれはジャニーさんの遺言らしい。事務所の中では「こんな小娘にやる金などない」という意見もあったらしいが、はたまたその意見は事務所の現会長にねじ伏せられたらしい。

そして一人では抱えきれないほどの巨額と家を突然自分の手に渡され、本当に恵まれている。

私はジャニーズ事務所に愛されている。それは十二分にわかっている。

けれど何故だろう。

それほどたくさんのものを手に入れたのに、何かが空っぽなのだ。

落ち着かないくらいのだだっ広い家に帰るたびに、

0がいくつも並んでいる通帳を見るたびに

私は空っぽになっていく気がしてならないのだ。

「お釣りが６００円のお返しになります。少々お待ちください。」

私は、その心を埋めるためにバイトに明け暮れた。