群青のヒロイン (ページ47)

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47.無力ページ47

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井上瑞稀side

「昼飯の後の体育ってやる気起きねぇー…」

「どうせ今日もフリーでしょ。バスケしようぜ」

「瑞稀いつもバスケのことばっかだな」

「逆にバスケ以外何すんの？」

「卓球」

「論外。」

金曜日の五限目の授業は保体。

体操着に着替えた俺等は体育館へ行くため階段を下りていた。

「どうせ放課後バスケするじゃん。卓球しようぜー」

「バスケ一択」

「バスケバカ」

「褒め言葉だからそれ」

なんて友達と笑いあっていると、騒がしい廊下からヒステリックな叫び声が聞こえてきた。

「A!!Aっ!!!誰か先生呼んで!!!」

―――…A？

「何？榎本？」

友達とすぐに階段を駆け下りて現場に行った。

するとそこには人だかりができていて、その隙間から一瞬だけ、蹲るAが見えた。

「やっぱ榎本じゃん。なにあれ、やばくね？ちょっ先生呼んで来ようぜ」

隣で友達が俺の背中を叩く。

「お、おう…」

気が動転してしまっていた俺は上の空のような返事をする。

なんだ？

何が起こってる？

「A！！」

聞き覚えのある男の声が、Aの名前を叫んだ。

…は？アイツ…確か

「…あれって、二年の永瀬廉くんじゃん。榎本、知り合いだったんだ。
　って……瑞稀？」

永瀬廉は人混みをかき分けるとすぐにAの元へ近寄った。

なんだよその顔。

まるでAが心配で仕方ないみいな緊迫した顔。

ソイツはずっと必死にAの名前を呼ぶ。

「……なにあれ」

そうこうしているうちに教師が駆け付け、Aは永瀬廉と共に保健室へと連れていかれた。

俺は、何もできずにただ立ちすくんでいた。