群青のヒロイン (ページ38)

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38.酒ページ38

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永瀬廉side

バイトが終わった後も、どこか元気のないA。

なんや。Aらしくない。

二人で歩いて帰りながら、俺は出来るだけ明るい口調で話しかけた。

「なあ、晩御飯なにがええか決まった？なんでも作るで」

「あー、私今日なんか食欲無いんで大丈夫です！なんか気を遣わせちゃったみたいですみません！」

困り顔で「ははは」なんて笑うが、そんな顔見せられるこっちの身にもなれや。

やめろ。そんな顔すんな。

調子狂うやろ。

「駄目や」

「…へ」

「夜ご飯は食べなさい。元気でらんで」

「…はあい」

俺の家に着いても相変わらずのA。

俺はどうにかしてやりたくて、晩御飯もいつもより少し手間をかけた。

お風呂から上がったAはいつもドライヤーをすましてくるのに、

今日は濡れたまま部屋へ帰ってきた。

こんな時にドキッとしてしまう思春期な自分にイラつき、

それを誤魔化すようにタオルで水けを取ってやる。

「風邪ひくで。ちゃんと拭け」

「今日の先輩、ママみたい」

「この家では俺が主やからな」

「はは、何ですかそれー」

笑った。

少しほっとした。

けれど、笑ったAの目元は少し腫れていた。

…こいつ、泣いとったんか？

「晩飯、作ったから食べるで」

「ありがとうございます。」

てっきり「わーい」なんて言ってご飯に飛びつくと思ったのに。

ああもう、どうすりゃええねん。

「あ、先輩。お茶貰います」

「あーおう」

頭の中で考えを巡らせながら適当に返事をした。

冷蔵庫にアレが入ってることなんか忘れていた。

「…先輩、一人暮らしですよね？」

「そうやけど？」

「………これ、何ですか」

そう言ってAが手に取ったのは、酒。

紛れもなくアルコール

うわ、やってもーたわ。