群青のヒロイン (ページ35)

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35.そんなんやないページ35

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永瀬廉side

数日後、金曜日がやってきた。今日はアイツが家に来る日だ。

アイツが来るってことは飯も作らなあかんな

「…ほんま、しゃーないな」

「へ？何か言った？」

「いや別に」

思わず口に出てしまっていた。

パンを口に咥えたままの勇太がポカンした顔をこちらにやる。

なんちゅー間抜け面。

「それより廉、家で一人で平気なの？」

「…あー、不審者情報のことか。平気やろ。」

「お前の家、駅からすぐじゃん。なんなら俺が今日泊まりに行こうかな」

「は。来んな来んな。」

「えーたまにはいいじゃんか」

「”たまに”じゃないやろ。この間泊まりにきたばっかやんけ」

「ちぇーケチ。」

今日だけは来させるわけにはいかない。

「そーいやさぁ、例のあの子とはどうなったの？」

「んぁ？」

話を聞いていなかった俺は気の抜けた返事を返した。

「Aちゃん」

「……なにが」

あかん。動揺するな。

そう思うのに、言葉はすこしカタコトになってしまった。

くそ。勇太もなんつータイミングでアイツの名前出すんや。

「この間も自販機でばったりあってさ、ちょっと話し込んじゃった」

「アイツのどこがええねん…」

「え～？可愛いじゃん。ちょっと抜けてるとことか」

「ふーん。でもあいつ、鈍感そうやしアピールしても無駄なんやない？」

「なるほどね。それで廉もてこずってるってわけ？」

「は…！？」

組んでいた足を直す。

またこいつはほんま…

「やから言ってるやろ。そんなんやないって。いい加減だるいで」

「はいはい。違うのねー」

くそ、ムカつくわその言い方。

勇太から顔をそらすように反対のグランドへ目を向ければ、そこには笑顔で笑うアイツの姿があって

俺はなぜか逃げるように目をそらし飲み終わったはずのパックジュースを思い切りすすった。