群青のヒロイン (ページ21)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:87,785 hit

21.俺ん家、来てもええけどページ21

.

永瀬廉side

「タクシー…しゃーないかぁ…」

本人は無意識だろうが、そう呟いたのが微かに聞こえた。

どこに住んでいるのかは知らないが、電車を使っているということはそれなりの距離があるんだろう。

それをタクシーで帰るっていうならかなりの金額になることが容易に想像できた。

不憫やなぁなんて人事のように考えていたが、ある提案がちらっと頭に浮かんでしまった。

実際人事だが、俺は一人暮らしだし家に人を呼んで特に困ることは無い。

無い…けど、

「大丈夫です！永瀬先輩は先に帰ってください！」

そう言ってタクシーを呼ぶためであろうスマホに視線を落としたそいつに、俺はいつの間にか口走っていた。

「―――俺ん家、来てもええけど」

…やべ。

いや、何がやばいんだ。これは人助けだ。

確かにこいつは女やけど、見え透いた魂胆とか垣間見えたことすらないし

別に一晩泊めてやるくらいなんてことない。

たまたま俺の家近いし、一人暮らしやし(二回目)

「…え、先輩？」

明らかに戸惑った様子に、なぜか俺も動揺してしまう。

「っタクシーとか呼ぶつもりなんやろ。金かかるやん」

言葉がつまり、いつもより言葉選びが適当になってしまった。

一晩泊めてやるだけだ。それも仕方なく。

「で、でも…」

「あーうるさい。来るんか？来んのか？どっちや」

「えっと………お邪魔、します」

かなり悩んで沈黙の末、そいつはそう言って頭を下げた。

…そんなに来るの嫌やったんか