群青のヒロイン (ページ32)

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32.不審者ページ32

”じゃあなんで俺がバスケの話したらつまんねー顔すんの”

瑞稀の言葉が頭から離れない。

脳内から追い出そうとしても、ふとした瞬間に思い出してしまう。

「…ねぇ、A、聞いてんの？」

「あっえ！？なに？」

「…もう、人がせっかく心配してやってんのに」

「ごめんごめん、何？」

つい考え込んでしまっていた。

ユカが私の肩を揺らし、不機嫌というよりは心配そうな顔で私を見つめる。

「だから、さっき先生が話してた不審者の話だよ」

「…あー」

そういえばさっき、担任がなにやら不審者が出たとか言ってたような…

「そういえばそんなこと言ってたね」

「その不審者情報、Aの家の近所じゃん！私心配だよー。あんたボーっとしてること多いし、バイトで夜遅くなるんじゃないの？」

「大丈夫だよー。駅から家までは近いし。遅いって言っても夜の8時だしさ」

「だーかーらっ！そういう警戒心が薄いとこが心配なのぉ！Aの家って母子家庭だし、金曜はお母さん夜勤なんでしょ？」

「そうだけど…」

確かに、金曜と日曜はお母さんが夜勤で家に帰ってこない。

でも、そんなのいつものことだし。

「うん。じゃあ気を付けるよ。」

「ほんとに分かってんのかなぁ。この子は」

本気で心配してくれるユカに、私は一応「気を付ける」とまた言い直してグッドサインを向けた。