20.終末 ページ20
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カチカチと時計の秒針だけが教室に響く。
…アイツ、来ないな。いつもこの時間には大抵いるのに。
携帯を閉じたり開いたりを繰り返す。
連絡が来ている様子も一切なく、ただただ視線は時計と携帯を行ったり来たり。
頭に浮かぶのは、この間廊下でうずくまっていたA。
何かを大事そうに両手で握っていた。
蘭「…！」
ガラリと教室のドアが開き、すぐに顔を上げると
『蘭くん、もう来てたんですね。』
長かった髪をボブまでばっさりと切ったAの姿があった。
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蘭「…なんで髪切ったんだよ」
二人でいつもの席に座るなり、質問を投げかける。
ついこの間、俺と同じ三つ編みにして「お揃い」だと嬉しそうに笑っていたのに。
『…髪乾かすの、面倒くさくなっちゃって』
やっぱり、どこか違和感がある。
蘭「…Aさ――」
言いかけたところで、Aが言葉をかぶせてきた。
『それより、今週の週末クリスマスですね。』
蘭「…あぁ、そうだっけ。」
『あの、その日1日だけ私にくれませんか？』
蘭「１日だけでいいのか？」
『はい。1日だけでいいので。』
１日だけ、か。
２４も２５も、俺はAのために空けておいた。
蘭「２５は？用事あんの？」
『えっと…家族でクリスマスパーティです。』
蘭「へぇー。わかった。２４な。」
『はい！ありがとうございます。』
深く頭を下げるA。今更改まってどうしたんだ。
それよりも
蘭「A、お前この間廊下で…」
言いかけたところで、今度はAの携帯が鳴った。
クソ。タイミング悪い。
『…すみません、ちょっと電話出てきます。』
蘭「おう」
携帯を片手に、いそいそと教室を出ていく。
そのとき、ふと電話の相手が誰なのかが気になった。
親…だったらこの間のように俺の前で会話するだろう。
わざわざ教室を出てまで俺に聞かれたくない内容の話なのか？
再び教室に戻って来たAは先ほどとは打って変わって暗い表情だった。
『すみません蘭くん、ちょっと急用ができてしまって…、
――…じゃあ終末、楽しみにしてますね。』
Aはそれだけ言うと、走ってその場を去ってしまった。
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作者名：平
| 作成日時：2021年11月24日 14時
