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16.里親 ページ16

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『うぅ…寒い。』



下校中


まだ11月にも関わらず、隣でブルブルと震えて寒そうにする秋吉。

今からこんなんじゃ冬は冬眠でもするつもりか?



俺の冷え切った手を秋吉のほっぺにピタリとくっつければ、「ひゃっ!」と女の子らしい軽い悲鳴を上げた。



『蘭くんの手、冷たい!コレあげます!』


そう言って渡してきたのは温かいカイロ。

秋吉って、こういうとこあるよな。



蘭「手、貸せ」



開いていた左の手を取り、カイロを握ったまま秋吉の手も温める。


『ふふ、半分こ』



…お前のほうが、手冷たいし。



蘭「…今日さ、秋吉の家に行っていい?」

『私の家ですか?何もないですよ?』

蘭「行きてぇの。だめ?」

『いいですけど…』



てっきり断られるとばかり思っていたが、案外すぐに了承してくれた。


俺が未だに気になっている秋吉の体の傷。


いじめではないと分かった今、俺の中で残る可能性として大きいものは”虐待”。



『あ、ちょっとまってください。母に連絡しておきます。』

蘭「おう」



秋吉は携帯を取り出すべく、俺から手を離す。

せっかく温まっていた俺の右手がまた冷たい空気に触れる。



『あ、もしもし。お母さん?』



電話の内容を聞く限り、何処にでもありそうな親子の会話っていう雰囲気だった。

が、俺が気になったのは秋吉の口調。





『もう、彼氏じゃないですよ!学校の先輩です。今から帰りますね。』


母親に、敬語使ってんのか?



『すみません。お待たせしました。お母さん家でお菓子用意してまってるって言ってます。』

蘭「お前ん家、親に敬語使うの?」

『あー…えっと、実は今の親、里親なんです。実の両親ではなくて。』




突然の新事実に言葉が詰まった。

俺はやっぱり秋吉のことに関して知らない事ばかりだ。



『あ、でも複雑な家とかではなくて!すっごく優しいお父さんとお母さんなんですっ!』


そう言う秋吉の笑顔に、嘘偽りは一切無かった。

その笑顔に、傷の謎はますます深まるばかり。



蘭「…そうか。」

『あ、あの家です!』



秋吉が指差す先にあったのは、広くて大きな一軒家だった。

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作者名: | 作成日時:2021年11月24日 14時

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