07:再会 ページ10
そしてここに来てから４日後、いきなり牢屋に入って来たかと思えば、白い布を被せられ手錠
をした私の腕を掴んだ。
そして、そのまま引っ張られて通路の前のドアを開け、何事も無かったかのように歩き出した。
『！？なん…オスカーさん！？』
「良いから歩け！」
『っ…』
「顔は上げるんじゃねぇぞ」
『ハイッ』
「うるさい黙れ」
多くの注文がオスカーから飛びながら歩き、ついには看守の前を通って地下B4階まで来てしまった。
「安心しろ管理官には伝えてある…」
『何の話をっ』
歩くのが早くて着いていくのがやっとだ。
「昨日、フーゴが目覚めた。実は前からこの刑務所に入っていた、完全に信頼した訳ではないがあいつを思う気持ちは本物だと思った。だから会わせてやる…」
会えないと思っていた。
会っても意味がないと自覚している、しかし、何故？
『なんで…、』
「俺では、ダメだからだ」
『？？』
ある一室の前でオスカーが止まった。いきなりで止まりきれずぶつかる、気にせず彼は続けた。
「ここだ、良いか開けるぞ」
『ちょっと本当待って！』
「開けるぞ」
こっちの制止を聞かずにオスカーが独房に繋がる扉を開けた。
奥へ続く通路を歩くと、薄暗いライトに照らされて寝ている彼を見つける。少しだけ息が詰まり、緊張してしまう。
オスカーが牢の鍵を開けて私の背中を突き飛ばし、中に入った瞬間に鍵を閉めた。
『ちょっと、何で！』
「お前の力は未知数だからな」
じゃあ、あなたの肩に乗ってるその猫は、悪魔じゃないんですか！？
と、叫びたいのを堪えて寝ている彼に向き直る、膝を着いて顔を覗く…久しぶりに見た彼は少しだけ大人びていた。昔より輪郭がはっきりしていて、男らしくなったようだ。
なんだか、寝ている様はあまり変わっていない気がして少しホッとした。
薄暗くて分からなかったが、あちこちに血が付着していて痛々しい、包帯も取れかかっている…これほどボロボロになって、すこし呼吸が苦しそうだ。
『…フーゴ』
そう、小さく呟くとうっすらと目を開けてこちらを見た。
ドキリと高鳴る胸を押さえつけて見つめ返すとフーゴが話し出した。
「…んぁ？……しす、たー？ははっ、お迎えがお前とはな…初めて俺が爆弾で、ころした相手…か、」
彼の声が、あの頃は変声期に入りたてのあの声がこうやって変わるんだ…思ったより掠れていて、少し色っぽい。
。
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作者名：名取針子 | 作成日時：2018年1月2日 22時
