【被虐のノエル】空白の魔女【フーゴ・ドレッセル】 (ページ5)

今日:10 hit、昨日:0 hit、合計:9,941 hit

03:警戒体制ページ5

「い……おい……」

誰かが呼んでいる。

記憶が朧気で、確か、猫の悪魔(？)と、私は取引をした。私は、本当に彼の世界に来たんだろうか…？

『……？…ウェーブ、成功したの？』

「おい」

『うひゃっ！？』

剃り込みを入れ、ピアスを沢山付けた男が覗き込んでいた。その肩には白い猫、多分、ウェーブだ。

薄暗い部屋に、硬いソファー、そこに私は寝転がっていた。身体を起こして猫を見る。

『ウェーブ…？』

『なーう』

猫が、何も話すなと言いた気に尻尾を揺らしている。かと言って、目の前にいるこの強面な男を無視する訳にはいかない、不審者を見るような冷たい視線が刺さった。

『…、…ここ、いえ、貴方は？私、Aです』

「俺はオスカー・ドレッセル、警さ」

『ドレッセル！？』

「……警察のオスカー・ドレッセルだ」

『けいさつ！？』

その出で立ちで！？

急な展開に頭が割れそうだ。ああ、そうか、あの子の兄って警察に引き取られたんだっけ…それにしてもその風貌、やんちゃ過ぎでしょ。

悶々としていると、こちらを品定めする視線を感じた。

「なんなんだお前…見た所、魔人だよな？…しかも、いやフーゴの側に居たからそういう事なのか？」

『どういう事？…あー、何があったのか覚えてないんですが、ここは、いったい…』

確か、ノエルにフーゴが潰された後…だ。

ようやく頭が状況を飲み込んだ。

『っ！…フーゴは！？フーゴはどうなりました！？』

「…死んだよ」

『え、？』

「鉄骨に潰されて死んだ」

嘘だろ、死ん……

『なら、私は何のために…っ、ウェーブ！なんとか言いなさいよこの、悪魔！！』

オスカーが私の焦りに驚いている。そんな事も気にせず、私はウェーブを睨み付けた。

『ふぅ…まぁ、良いか、このヒトも魔人みたいだし…』

ウェーブがストンっと猫のまま布団に座った。

『人聞きの悪いこと言わないでくれよ、ボクは悪魔だけどキミに不利な事はしないよ、せっかくの契約者なんだから…もう、嘘つかないでくれるかなオスカークン』

『嘘？』

「安心しろ…フーゴは死んでいない、お前を試しただけだ」

『試す？』

「あいつの側に居たからな念のためだ、その焦り様だと、お前がフーゴをやったという訳ではないようだな…」

『あ、…』

ノエル・チェルクエッティ…間違(まご)う事無き、悪魔でも、誰でもない、フーゴの頭上に鉄骨を落とした人物だ。

「何か知っているようだな…話せ」

next