02:おいでませ異物 ページ4
ウェーブが、悪魔が、ステッキをくるくる回しながら口を三日月の様に嗤わせて、近づいてくる。
画面いっぱいに、その顔があった。
『そこで、素直に“うん”と言わない子は好きだよ、でもそれじゃあ面白くないし、キミの望みが薄すぎる……そんなんじゃあボクつまらないよっ』
ついに、画面から出てきた。
『だからボクのプレゼント！キミがカレを助ける理由は、向こうに行ってからで良いっここまで譲歩したんだ。来るよね？』
『…この世界を捨てる、』
『嫌かい？』
母と父、兄と妹が浮かぶ…けど、そんなのは些細な事、私もまた、彼という炎に魅せられたんだから…
『とんでもない、もう私の心はそっちの世界にあるよ』
『じゃあ契約成立だよろしくA』
『よろしくウェーブ』
握手をした瞬間、私は意識を失った。
※
ボマーを探す声が無線から流れる、それに指示を送り、息を吐いた。
今回は爆弾魔のフーゴの拠点制圧の日、いよいよ待ちに待ったこの日だった。
俺が、必ずお前を、そう意気込んでいたのに…。
「隊長！中二階にボマーと思わしき人物が！」
「一人で接触はするな！」
「いえ、鉄骨の下敷きになっており、こちらからでは生きているか、死んでいるか…」
「……各員に告ぐ、ボマーを潰している鉄骨を退ける！ボマーの手下を拘束し次第中二階へ集まれ！」
そこには、既に戦闘が行われた痕跡があり、ボマーの手下が倒れ、ボマーまでもが、倒されていた。
思いもよらない事態に舌打ちをすると、おずおずと隊員が続けた。
「それから、隊長…真っ白な少女が一人倒れていまして、その…来て確認して頂いた方が、よろしいかと…」
「？…わかった……」
現場に着くと、驚く事に真っ白な少女がフーゴの手を握って倒れていた。その傍らに一匹の猫が居る。
この少女と猫は魔人と悪魔だと、直感が告げた。
『なーおっなーおっ』
人懐っこい猫のように、白いソレが俺の足にすり寄る、まるで警戒していない素振りに毒気を抜かれ、蹴り飛ばしはしなかった。
俺は少女を横抱きにして離れさせ、他の隊員と鉄骨を退ける作業に入った。
猫はその背中をじっと見ていた。
「なんだ」
『なーお』
「…おい、この娘も連れていくぞ、何か知っているかも知れない」
猫が少女の腹に乗った。
「連れていけという事か？」
『なー』
身軽に俺の肩に乗った。
『なー』
気絶している二人を連れて俺達はボマーの拠点を後にした。
next
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 30人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：名取針子 | 作成日時：2018年1月2日 22時
