10:脱獄開始 ページ13
『おや？』
白猫が、特別独房の床を見た。
『どうしたのウェーブ？』
『いいや、なんでもないよ…
アハハッ、何か面白いことが起こる予感がするネッ』
悪魔が不適に笑う。
突如ドォンッと言う爆発、施設全体が揺れてAの身体がふらつく、倒れるギリギリで壁に手を着いて耐えた。
『きゃっ、じ、地震！？』
『下からだね、フーゴクンかな？』
『な、なんで…確かにいつもに比べて今日は少し騒がしかったような…』
「おい！」
ドアを蹴破って緑色の服を来た男が入ってきた。
もちろん彼は…
『ふ、フーゴ！？』
「そこの隅にいろ、このドアぶっ壊してやる！」
『な、何が起こってんの！？』
能力未知数のAの独房は、力ではびくともしない鉄格子で作られていた。
フーゴが炎で鉄を溶かし、そのまま大きく曲げる、人ひとり通れるぐらいの穴になり手を離した。
「ほらよ。一丁上がりだ…火傷すんなよ」
『あ、ありがとう…』
先にウェーブが飛び越え、Aは真っ白なワンピースをたくし上げ、熱くなった鉄に触れないように出ると、フーゴが下から上まで見てきた。
この、兄弟…見るところ同じかよ。
「おいシスター…ノエル・チェルクエッティは知ってるか？」
『え、うん…』
「なら話は早ぇ…あいつと一緒にここから脱獄しろ」
『ま、』
「待ったは無しだ、一瞬の戸惑いが命取り、下手すると死ぬぜ」
走り出すフーゴの後ろを追う、火の海にするつもりなのかところ構わず放火している。一階に着くと近くの警備員から倒した。
異変に気付いた警備員が正面のドアから逃げるとフーゴが追いかけるが、扉は固く閉じ、彼の行く手を塞いだ。
「くそ、開かねぇ…」
扉を蹴飛ばし八つ当たりする。
そして、あっちへウロウロ、こっちへウロウロ…落ち着きなく歩いていた。Aは手で顔を扇ぎながら声を出した。
『これじゃ蒸し焼きになるっ…ノースリーブのワンピースで良かった、流石に炎で熱いわっ』
「うるせぇよ」
足音が聞こえてきた。ノエルだ。
「あら、何だかんだで待っててくれますの？」
「ちげぇよ！ここのロックが開けられねぇ…お前、ここを通ってきたなら開けられるだろ？」
「……貸し一つですわよ。」
「さあ、ここからは本気で行くぜ！」
ぼんっと燃え始めたフーゴを余所目にAはノエルを見た。
『ノエルちゃん』
「え、なんでわたくしの名前を…」
。
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作者名：名取針子 | 作成日時：2018年1月2日 22時
