序章 ページ1
子供の頃から、私はよく同じ夢、続き物の夢を見る。
正確に言えば、二年前…21歳までだが、小さい頃に見たその夢は、幼いからか、まるで映画館で見るドキュメンタリーの様で、ドキドキした。
悲鳴や怒号、走り回る人々の喧騒の中、小さな子供が、火傷を負いながらまじまじと炎で燃え盛る一軒家を見ていた。
私の見ていた映像では、隣に居た女性が心配そうにその子供を引き寄せて「行っちゃダメよ。」と言った。
しかし、必死に子供は炎に向かって手を伸ばす。
「母さん、父さん…兄貴っ」
もう助からないであろう火の手、私達の周りにも炎が回っていた。
『＊＊行くわよ！』
女性はそう言って子供を抱えながら、私の手を取り、走り出した。
そんな私も夢に疑問を持ち始め、色々知ろうとして…子供は男の子で、私の見ていた映像、私の目線の＊＊は女性の子供だと言うことがわかった。
夢の始まりは、爆発だった。
急に爆発が起きた。
その前に数回、変な音がしたのを聞いた。私は、いや、＊＊は女性、母親に連れられるまま火の海を走った。
そこで男の子を見つけ、母親は二人を引き連れて、火の手の来ない所へと逃げた。そこからは男の子の手当てやら、なんやらで忙しく過ごしていた。
男の子がある程度まで回復すると、彼はとても手の掛かる子供だと言うことがわかった。
母をマザーと呼び、＊＊をシスターと呼ぶ、スラム街の寂れた教会に身を寄せて、三人のそんなごっこ遊びが始まった。
彼の名前はフーゴ、兄がいるようでずっとその事を気にしていた。幸いあの渦中で生き残り、警察の偉いさんに貰われたとの情報が入り、安心しているようだった。
「おいシスター！待てよ！ハァッ…ハァッ…っ置いてくな！」
『□□□□□□□□』
「んだと！？」
怒ったフーゴに追いかけられ、楽しい日々を送っていた。
筈だった。
『□□□□□□□□？』
「あ？…なんでもねぇよ」
最近、少し彼が冷たい。
そして、目がギラギラして危ない…何かが、おかしい。
『＊＊来ちゃダメよ！きゃああああああああああっっっ！！！！』
何かが焦げた匂い、嗅いだことのない匂いだった。臭い、臭い、臭い。
「よぉ、＊＊…そんでもって、さよならだなぁ？楽しかったぜ、あばよシスター」
目の前に何かが、転がってきた。
ぱちぱちと音を立てているソレを認識する前に、弾けた。
そこから、私はもう夢を見なくなった。
あれから、８年…夢では、なくなっていた。
。
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作者名：名取針子 | 作成日時：2018年1月2日 22時
