逃げろ。【ホラー】

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その小さな呟きが引き金になった、とでもいうべきか。


呟き、数秒後。目の前に陳列された本がバサバサバサ！と乾いた音を立て落下した。


そのうち１冊が私に右足に当たり、痛みを感じさせる。


「…痛？！」


反射的に言ってしまったが、実はたいしてそれほど痛いわけではなかった。


でも痛いっちゃ、痛い。


先程までお行儀よく陳列された本がいきなり落ちてくるなんて…誰が想像した？


想像できていれば、避けることくらいできたのに。


「…もう、なんなの…さ…？？」


自分の鈍くささに苛立ち、そしていきなり落ちてきた本に文句を言いかけて…私は言葉を止めた。


本棚の奥…―――壁に、光もないのにキラリと光る何かが見えた。


察するに…埋め込まれた、何か。


一体、何だというのか…。


疑問に思った私は、それをもっとよく見たいという衝動に駆られる。


仕切り板によって区切られた上下の段の本をすべて抜き取る。


それも外せるようになっているらしく、私は何の迷いもなくそれを外した。


姿を現したのは…金属でできた文字盤だった。


文字盤というよりは、暗証番号を入れて鍵を開けるタイプの扉とかに取り付けられているあれ…それに近い。


ただ、よく見るのとは少し違った。


普通は数字が彫られているはずなのだが…どういう訳か、そこには英文字がＰＣのキーボードの配列で並べられていた。

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