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「……あれ、伊野尾くん?くたばった?」
強く抱きしめても、否、締め上げても反応がない自分を不審に思ったのだろう。少し腕の力が緩んで、そこでようやく伊野尾は僅かな力を振り絞って高木の体を突き飛ばした。
「っ!?」
勢いがついて、高木がごろりとソファの下に転がる。その隙に、伊野尾は素早く立ち上がった
「〜〜〜っ、ばかっ!」
そうして子供の喧嘩のようにそう言い捨てて、伊野尾はその場から逃げ出した。羞恥と混乱で、いつの間にか目には涙が浮かんでいたことに、今更気付く。けれどそれを拭う余裕もなかった。
床に転がったままこちらを見上げていた高木は、間抜けにぽかんと口を開け、何故か顔をほんのりと朱に染めていたように見えたが、一瞬だったので見間違いかもしれない。とにかく顔の熱が引いて、鼻腔と肺の中からすっかり高木の匂いが消えてしまうまで、伊野尾は誰とも顔が合わせられない状態だったのだ。
(高木の素の匂いが好きなんて、気付きたくなかった……!)
これからもほぼ毎日高木と顔を合わせるのに、一体どうすればよいのだろう。とりあえず当面は、少しでも高木と距離をとってその他にひっついておこうと伊野尾は心に誓った。
Fin.
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琴葉(プロフ) - ひなたさん» コメントありがとうございます!矛盾しているその気持ちわかります。映画が終わった瞬間だとか、最終巻を読み終えた時だとか。薮くん視点やその後のお話、考えてみますね。時間がかかってしまうのですが、待っていていただけると嬉しいです。とりあえずただいまです。 (2018年5月22日 16時) (レス) id: 3ce7e31af3 (このIDを非表示/違反報告)
ひなた(プロフ) - おかえりなさい。今更みたいになってしまいましたが。完結してしまったんですね。続きを読めて嬉しかったけれど終わってしまうと一抹の寂しさ。個人的には薮くんサイドのお話やその後のふたりも気になります。また落ち着かれたら新しいお話もお待ちしてます(^ω^) (2018年5月19日 20時) (レス) id: 85d71dbfbe (このIDを非表示/違反報告)
琴葉(プロフ) - かほさん» こんにちは。受験、終わりました。応援ありがとうございます^^ (2018年3月7日 15時) (レス) id: 3ce7e31af3 (このIDを非表示/違反報告)
琴葉(プロフ) - ひなたさん» こんにちは。受験、終わりました!待っててくださってありがとうございます。今週中には更新するつもりです。遅くなってごめんなさいm(_ _)m (2018年3月7日 15時) (レス) id: 3ce7e31af3 (このIDを非表示/違反報告)
かほ(プロフ) - このお話大好きです。受験、応援してます! (2018年2月10日 20時) (レス) id: fb0730de71 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:琴葉 | 作成日時:2017年8月23日 12時