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それでも、今鼻腔に感じるのは、香水ではない、気持ちを落ち着かせるような、安らげるような、そんな匂いだった。このまま目を閉じて、眠ってしまいたいくらいだ。嗅いだことある気がするのだが、これが一体何の匂いだったか、思い出せない。

すぅ、とまた大きく息を吸って顔を緩めたところで、ふと伊野尾は他のメンバーたちが黙り込んでいることに気付く。別に特定の誰かに話しかけていたわけではないけれど、7人もいれば普通は誰かが相槌でも打ってくれるものだろう。何故、誰も言葉を発しないのか。純粋に寂しい。

「え……なんでみんな黙ってるの……?」

7人の顔を順に眺めていくと、それぞれ、なんとも言えない表情を浮かべている。神妙な顔、信じられないような顔、にやにやと奇妙に緩んだ顔。その中で何を考えてるのかわからない表情の知念が、不意に口を開いた。

「……さっきまでそこに、ずーっと寝てたよ」

真顔の知念が、わざとなのか、一番重要な部分を抜かしてそう口にした。

「誰、が…?」

何となく嫌な予感を感じながらも、話の流れからそう聞かざるを得ない。若干顔を引きつらせながらぎこちなくそう問いかけた時、この場にいなかった残りのメンバーが姿を現した。

「はぁ〜〜、なんでミルクティー売ってないんだよ、ここの自動販売機」

そんなことを言いながら部屋に入ってきたのは、高木だ。普段なら、律儀に答えてあげるであろう八乙女も、何故か黙っている。高木は微妙な空気に若干気づき、頭にはてなマークを浮かべながらも、伊野尾の横にどさりと腰を下ろした。いつもの香水の香りがしない。ここに来る前、シャワーでも浴びたのだろうか。

「なんだ、伊野尾くん、来てたんだ。今日なんか疲れない?俺なんか帰ってきてからずっと寝てたんだよ」

は〜、とため息つきながら、高木は伊野尾をソファの下に押し退け、ごろりと寝転がった。ちょうど、伊野尾が先程匂いを嗅いでいた辺りだ。

7人の、居たたまれないような、からかうような、そんな視線を感じる。

(……俺、さっき、なんて言った…?)

つい1、2分前の自分の台詞くらい、さすがに覚えている。どちらかというと忘れたいし、いっそのことなかったことにはしたいが、生憎脳内で巻き戻して再生されてしまった。

――この匂いが好きだとか、落ち着くだとか。

(この匂いって……高木の、素の匂い?)

そう意識した途端、ぶわりと一気に顔が熱くなった。

.→←好きなのは tkin



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設定タグ:Hey!Say!JUMP , bl , やぶいのやまいの   
作品ジャンル:恋愛
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琴葉(プロフ) - ひなたさん» コメントありがとうございます!矛盾しているその気持ちわかります。映画が終わった瞬間だとか、最終巻を読み終えた時だとか。薮くん視点やその後のお話、考えてみますね。時間がかかってしまうのですが、待っていていただけると嬉しいです。とりあえずただいまです。 (2018年5月22日 16時) (レス) id: 3ce7e31af3 (このIDを非表示/違反報告)
ひなた(プロフ) - おかえりなさい。今更みたいになってしまいましたが。完結してしまったんですね。続きを読めて嬉しかったけれど終わってしまうと一抹の寂しさ。個人的には薮くんサイドのお話やその後のふたりも気になります。また落ち着かれたら新しいお話もお待ちしてます(^ω^) (2018年5月19日 20時) (レス) id: 85d71dbfbe (このIDを非表示/違反報告)
琴葉(プロフ) - かほさん» こんにちは。受験、終わりました。応援ありがとうございます^^ (2018年3月7日 15時) (レス) id: 3ce7e31af3 (このIDを非表示/違反報告)
琴葉(プロフ) - ひなたさん» こんにちは。受験、終わりました!待っててくださってありがとうございます。今週中には更新するつもりです。遅くなってごめんなさいm(_ _)m (2018年3月7日 15時) (レス) id: 3ce7e31af3 (このIDを非表示/違反報告)
かほ(プロフ) - このお話大好きです。受験、応援してます! (2018年2月10日 20時) (レス) id: fb0730de71 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:琴葉 | 作成日時:2017年8月23日 12時

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