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「なに、自覚なかったの？」
「ないわけじゃ、ないけど……」
自分自身が思っているだけの状態と、実際に第三者から突きつけられるのとじゃ大違いだ。ものすごく恥ずかしい。山田は目を閉じて呻く。
いっそこの場から、消えたい。
「まあ、逆を言うと、こんな分かりやすい好意を可愛がってる山田から向けられて、それでも何も変わらない伊野ちゃんもすごいけどね」
熱烈な視線にも、独占欲強めの彼氏さながらくっついて回る動きにも全く動揺せず、伊野尾は何も変わらず日々を過ごしている。少なくとも、有岡からはそう見える。いつも通りの感じで、けれど特別扱いもせずに山田と接する。
ついさっき、自分に向けられる火がつきそうなほど熱い瞳にも動じず、いつものように高木と戯れる伊野尾の姿を思い出して、有岡は腕を組んだ。それはいつもの事だとしても、たいしたもんだ、鋼の心臓。
「やっぱ、もしかしなくても、伊野尾ちゃんって、相当鈍いよね」
顔から手を下ろした山田が、眉間にシワを寄せて問いかけてくる。有岡は腕を組んだまま、うーん、と首をかしげた。
「恋愛沙汰ねー、自分に向けられる好意には鈍そうだからなあ」
伊野尾が絡んだ恋愛事と言えば、誰々が伊野尾を好きだの、告白したけど丁重にお断りされただの、そういう話ばかりだ。告白をさせてしまう時点で、そこに至るまでに釘をさせておけない時点で、確かにかなり鈍いのかもしれない。自分に向けられる好意が、恋愛感情だと、気づけない。あるいは、気づかない。気づこうとしない。
――友達だと思ってた人に、好きだって言われた…、そうじゃなくて友達として仲良くなりたかったのになあ…。
そう切なそうに呟く伊野尾の姿を、有岡は今までに何度か見てきている。複雑な気持ちが相まって少し泣きそうな伊野尾を、毎回暖かいホットミルクを入れて甘やかすのは有岡の役目だ。
いつだって伊野尾はほんの少し安心したように、ありがとう、大ちゃんと言うのだ。
「山田はさあ」
かしげていた首をまっすぐに直して、有岡は山田の瞳を見つめる。太陽の光を反射して、きらきらと輝く瞳。火傷しそうな眩しさに、もし自分がこの目を向けられたら、ちょっと逃げられる気がしないな、と有岡は思う。
素直にがむしゃらに当たって砕けられるには、年を取りすぎたし大人になりすぎた。自分も、彼も。
「伊野ちゃんのどこが好きなの？」
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琴葉(プロフ) - ひなたさん» コメントありがとうございます！矛盾しているその気持ちわかります。映画が終わった瞬間だとか、最終巻を読み終えた時だとか。薮くん視点やその後のお話、考えてみますね。時間がかかってしまうのですが、待っていていただけると嬉しいです。とりあえずただいまです。 (2018年5月22日 16時) (
レス) id: 3ce7e31af3 (このIDを非表示/違反報告)
ひなた(プロフ) - おかえりなさい。今更みたいになってしまいましたが。完結してしまったんですね。続きを読めて嬉しかったけれど終わってしまうと一抹の寂しさ。個人的には薮くんサイドのお話やその後のふたりも気になります。また落ち着かれたら新しいお話もお待ちしてます(^ω^) (2018年5月19日 20時) (レス) id: 85d71dbfbe (このIDを非表示/違反報告)
琴葉(プロフ) - かほさん» こんにちは。受験、終わりました。応援ありがとうございます^^ (2018年3月7日 15時) (レス) id: 3ce7e31af3 (このIDを非表示/違反報告)
琴葉(プロフ) - ひなたさん» こんにちは。受験、終わりました！待っててくださってありがとうございます。今週中には更新するつもりです。遅くなってごめんなさいm(_ _)m (2018年3月7日 15時) (レス) id: 3ce7e31af3 (このIDを非表示/違反報告)
かほ(プロフ) - このお話大好きです。受験、応援してます！ (2018年2月10日 20時) (レス) id: fb0730de71 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：琴葉 | 作成日時：2017年8月23日 12時
