5.願わくば ページ22
マーメイドの憂鬱、天色の約束、空が落ちてくる、カテゴリーエラーの続き
「それは流れ星に三回願ったって叶わないことだった。」
伊野尾 side
「伊野尾!これから皆でカラオケ行かない?」
「あっ、ゴメン!俺、今日用事あるんだあ…」
「ええー、またー?」
この間のお祭りのときもそうだったー、と口を尖らせるクラスメイトの頭をなでこなでこと撫でていると、後ろから別の声が飛んでくる。
「お前、彼女できただろ」
「できたの!?」
「ええ!?できてないよー」
「え〜、怪しいなあ〜」
どこのどいつだー?と肘をつついて揶揄ってくる彼に、誤解だよーと笑ってやんわりと否定する。
「でもさ、伊野尾の彼女だったら絶対ウチの学校じゃないよね」
「えー?なんで?」
「だってここにいる女子、ケバいのばっかなんだもーん。似合わない!」
「…それ、ここの女子がいる前で言っちゃう?」
「俺はね、伊野尾には清楚な大人っぽいタイプの女の子の方が似合うと思うんだ」
「いや、人の話聞けよ!」
背は伊野尾よりもちょっとだけ低くくて、髪はロングで、頭良くて、優しくて〜、と指折り数えるクラスメイトの言葉に、無意識に性別の違う薮との共通点を探してしまう自分がいて思わず苦笑いがこぼれる。彼の話に相槌を打ちながら校門へと足を進めていると、同じく隣を歩いていたクラスメイトの男子がふと声をあげた。
「…あれ、なんか校門の方ざわついてね?」
見ると、たしかに彼の言葉通り校門辺りがいつもよりも変に騒がしい。生徒全員というよりは、主に女の子たちの視線が集中している気がする。
「誰かいるのかなあ…伊野尾、見える?」
「んーん…人が多くてなかなか…」
「あ、俺見えた。西高生徒がいるっぽい」
「えっ、あの進学校の!?」
その時、前にいた人だかりがずれたことで俺の目にもその人物がはっきり映る。太陽に照らされてキラキラと光っている薄茶色の髪。茶色の肩掛けカバン。─そして、見覚えのある制服のネクタイに光る見覚えのあるネクタイピン。
紛れもなく俺のよく知るあの人だった。
「やっ、」
「や?」
「やぶ、」
「やぶ?」
「おい、お前どーした」
片方は心配そうに、片方は呆れ顔でこちらの顔を覗き込んでくるのだが、正直今の状況でそれらに応える余裕はない。校門にいる彼の瞳が俺を捉えた瞬間、条件反射のように視線をパッと逸らしてしまった。
185人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
琴葉(プロフ) - ひなたさん» コメントありがとうございます!矛盾しているその気持ちわかります。映画が終わった瞬間だとか、最終巻を読み終えた時だとか。薮くん視点やその後のお話、考えてみますね。時間がかかってしまうのですが、待っていていただけると嬉しいです。とりあえずただいまです。 (2018年5月22日 16時) (レス) id: 3ce7e31af3 (このIDを非表示/違反報告)
ひなた(プロフ) - おかえりなさい。今更みたいになってしまいましたが。完結してしまったんですね。続きを読めて嬉しかったけれど終わってしまうと一抹の寂しさ。個人的には薮くんサイドのお話やその後のふたりも気になります。また落ち着かれたら新しいお話もお待ちしてます(^ω^) (2018年5月19日 20時) (レス) id: 85d71dbfbe (このIDを非表示/違反報告)
琴葉(プロフ) - かほさん» こんにちは。受験、終わりました。応援ありがとうございます^^ (2018年3月7日 15時) (レス) id: 3ce7e31af3 (このIDを非表示/違反報告)
琴葉(プロフ) - ひなたさん» こんにちは。受験、終わりました!待っててくださってありがとうございます。今週中には更新するつもりです。遅くなってごめんなさいm(_ _)m (2018年3月7日 15時) (レス) id: 3ce7e31af3 (このIDを非表示/違反報告)
かほ(プロフ) - このお話大好きです。受験、応援してます! (2018年2月10日 20時) (レス) id: fb0730de71 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:琴葉 | 作成日時:2017年8月23日 12時