能面 その漆(終) ページ7
琥珀「呪いの反動……ですか?」
翡翠「そうだよ。呪いは、術者に大いなる貢献をもたらす呪い(まじない)の一種だ。まぁ、諸説あるけど。人を呪い殺すために使われることがほとんどだ。で、恨み辛み目的がほとんどだが、たまに自分の生み出した何かの実験のために赤の他人を巻き込みそれを作り上げていくサイコなやつもいる。少なからずね。でも、恨んでも妬んでもいないのに赤の他人を犠牲に実験をやるのは、リスクが大きすぎる。多分だけど、そのサラリーマン憑かれたんじゃないかと俺は、考えている。けど、真相はまた闇のなかだしね。まぁ、解決したからいいんじゃない、どうでも。」
と先輩は伸びをしながら、大きな欠伸1つしながら、デスクに置いてあるパソコンに向き直って報告書を作る作業を再開する。その光景を見て僕は1つ疑問が生まれた。この興信所は、霊や妖怪といった通称オカルトが絡まないと動かない言わば、曰く付きの興信所でもある。他の探偵事務所や興信所などと比べれば異質も異質な存在である。しかし、そういったものでもちゃんと解決はしているのだ。が、先輩は今、今回あった事件の報告書を作成しているのだが、何処に提出するつもりなのだろう。一体誰に、何処に、どんな所にその報告書を送るつもりなのだろうか。だけど、その事を尋ねても「さあね。」か「どこだと思う?」の答えしか帰ってこないのだろう。訊くだけ無駄というものだ。僕も作業台に向き直る。今日あった動く能面事件の真相は、とあるサラリーマンが作った自作の呪物の実験目的のために僕の通う高校の寮が狙われた。が、寮のおばちゃんである静江さんの旦那さんが作ったとされる二つの能面の力によって寮の外に追い出されたあげく自らの力によってその身を滅ぼした哀れな人がいたということになるのだろうか。今、考えた所で何も変わらない。
昔から、この人の付き合いで霊や妖怪などの関わりがある事件に携わってきたけど、今の自分でも時々考えることがある。このさきに待ち受けるものは一体何なのだろう。僕はこの先、何をしなければ、いけないのだろう。そして、あの人は何処に向かっていくのだろう。その考えを打ち消すように夜のとばりが降りていくのだった。
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作者名:水神 竜聖 | 作成日時:2017年7月4日 21時