38話《思い出させたくない》 ページ8
赤井side
俺の頰に触れ、そのまま後ろに倒れかけたAの手を掴んでなんとか打ち付けずには済んだが意識はなくしてしまったようだ。
赤『貴方は誰なの…か。』
確かに、沖矢昴は俺である。
しかしそれを言って仕舞えば、思い出してしまうかもしれない。
そして、あの男が毎日のように玄関先に置いていく花束。
いい加減決着をつけなければな。
まだ、あの男の愛車に俺の発信機は付いているようで今もなお動いている。
Aを部屋に運びベッドに寝かせた。
その後、車庫へ向かいシェルビーに乗り込み発信機の指し示す場所へ向かった。
・・・・・・・・
ジ『やっときたか。』
赤『わざと付けっ放しにしていたって訳か。』
ジ『ふっ。てめえをぶち殺したらキールを殺す。その後にリキュールを回収する。』
赤『一つ。賭けをしようか。』
ジ『?なんだ?』
赤『お前も俺も一人の女を好いている。それもそいつの為なら命など惜しくないほどに。』
ジ『だったらなんだ?』
あいつの性格はリキュールのように溶け込む。ならば、俺たちの性格も移っているだろう。
赤『愛しい女が命懸けで守った命。ここで撃ち合いして捨てれば必ずどちらも後悔する。』
ジ『なんだ?つまりリキュールの記憶を先に呼び起こした方の勝ちとでも言いたいのか?』
赤『ああ。但し、俺が勝てばリキュールから手を引いてもらう。』
ジ『てめえが負けた時は、お前の命はないと思え。』
当たり前だ。じゃなきゃ納得しねえだろ。あのお姫様は。
ここで無差別に殺し合い、血だらけで帰る方が記憶が戻った時どんな顔するか…まあ、わかるが。
ジ『じゃあな。てめえがいないときにでも会わせてもらおう。』
そう言ってポルシェに乗り込んだジンはどこかへと去って行った。
俺はシェルビーに乗り込み帰路についた。
思い出させたくはなかったが、思い出してくれ。
あの病院での約束は必ず果たすから。
なあ、A。
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作者名:米介 | 作成日時:2018年8月9日 13時