『拝啓、いつかの貴女へ』Ⅱ (ページ3)

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３５話《誰も死んでほしくない》前編ページ3

ジンにキスされた。
その時秀一にキスされたことを思い出した。

そして私は…。

2人の間に飛び込んだ。
二つの弾丸が背中とお腹に当たり、骨の軋む音が聞こえながら、倒れた。
血が溢れ出て意識が遠のく中、誰かが、私を抱きかかえた。
綺麗な銀髪…。こちらに駆け寄るニット帽の愛した人。

これが運命(さだめ)か。
2人を助けられたならそれでいいよ。
あ、れ？また、忘れちゃうのかな？
まだ、2人に…笑顔見せてない、のに。

また暗い暗い闇の中に落ちていく。
今度は誰の手も捕まることがなかった。

・・・・・・・・・・

ピッ…ピッ…という、機械音で目が覚めた。
ここ、どこ？
身体は起こせないため眼だけで辺りを見渡す。
ニット帽の男が壁に寄りかかって外を見ていた。

『あ、ｯ！』

声を出そうにもかすれる上に痛みが走りうずくまる。
その時のベッドの音に気がついたか男はこちらに近づいてきた。

赤『目が覚めたんだな！A…！』

『はい…。A…それが私の名前ですか？』

頑張って話すと男は驚いた顔をした後、部屋を出た。
怒らせたのだろうか。そう思ったがすぐにその思いは消えた。
誰かを連れてきて、何か話している。

「強い衝撃が頭にまで響いて記憶喪失がぶり返した可能性もありますね。本人の意思によって消えた可能性もなくはないんですが…。取り敢えず、後二週間様子見であとは自宅療養を。」

赤『はい。わかりました。ありがとうございます。』

「お気の毒に。事件に巻き込まれて銃弾を二発も…。」

赤『ｯ。そうですね。もう事件に関わってほしくないものです。』