思い出すのは、いつも (6)【黒尾鉄朗】［完結］

六月中旬（答え合わせ） ページ5

今から何を言われるのか。





だけど、




大丈夫、大丈夫





今までのことを思い出せ。





仕事はひとりで頑張れているし、


なんなら今は絶好調




ご飯を食べたり、


遊びにいったりする友達だっている。





アキくんはずっと優しいし


また、慰めてくれるって言ってたじゃん。





一静さんとはもう、一ヶ月近く会っていない。



帰ったら、連絡しよう。





一人でお邪魔できるお店も増えたし


元気がない時は

宮さんのおにぎりを食べたらいい。





"大丈夫、大丈夫"





気づかれないように深呼吸をして



"私は大丈夫ですよ"って顔を貼りつけて。





黒尾さんの言葉をじっと待つ。





「…………俺さ」





黒尾さんの声に、ビクリと肩が震える。





"大丈夫、大丈夫"





「Aがいないと


タバコも辞めらんねーんだわ」





困った顔の黒尾さんから出てきた言葉は


少し意外な言葉だった。





「そう、なんですね」





よくわからない、相槌を打つ。





「俺のこと心配してくれんの、Aしかいなくて」





……………。





「ねぇ、俺にさ。

また、タバコ辞めろって言ってくんない？」





……………。





「黒尾さん。タバコ、心配です」





私の言葉に、優しく笑う





けど、それが泣きそうにも見えるのは





私の気のせいなのか。





「うん。ありがと」



「……いえ」



「あと一つ、お願いがあるんだけど」



「なんで、しょうか……」



「俺、すぐ忘れちゃうからさ。

ソレ、定期的に言ってくんない？」





………………。





黒尾さんが言いたいこと。





「私で、いいんでしょうか……」



「ウン。Aじゃないと無理。


それに俺たち

"ほとんど運命共同体" だろ？」





黒尾さんが言っているのは、いつか




星座が一緒だとわかった日





私が言った一言





「だからさ、運命共にしてくんない？」





ガヤガヤと煩い店内





私の言葉に、優しく笑う黒尾さん





だけど、それが泣きそうにも見えるのは





やっぱり私の気のせいなのだろうか。





だけど私は



我慢できなくて。





黒尾さんのことで



もう泣かないって決めていたけど





我慢、できなかった。

その後→←六月中旬（答え合わせ）

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す