24．仲直り（角名） ページ16
「ご飯どうする？食べて帰る？」
「………そんな気分じゃない」
カフェを出た後
「じゃあ帰ってから食べよ？」
「………うん」
相変わらず機嫌が悪いAと並んで歩く。
いや、ただこの前まではキレてたけど
今日はキレてない。
でもなんか今日はシュンとしてる？なんで？
何が起こってるのか相変わらずさっぱりわからない。
だけど、俺の隣を並んで歩いてる感じから
たぶん悪くはない。
「ソレ持つよ」
Aの右手にぶら下がってる紙袋を、そっと受け取る。
この前までなら拒否されていた気もするけど
素直に手を離すから、やっぱり悪くない。
「これ何？」
「治くんへのお土産」
「………へぇ〜〜」
治と会う約束してたの？
つい、聞いてしまいそうになったけど。
でも結局今俺と一緒にいて、一緒に帰ると言っているから
治には会わないってことだよね？
今は余計なことは言わないでおこう。
たぶんこれが正解。
最寄り駅で降りた後、スーパーに寄ってお惣菜を選んでレジに並ぶ。
ほとんど普段通りのA。
あ、なんかこういうの久しぶりかも。
レジのところにAが好きなチョコレートの期間限定のヤツが置いてあったから
「あ、これ。期間限定だって。あとで一緒に食べよ？」
「わーーー！美味しそう！」
ニコニコとしたAに思わず口元が緩む。
まぁ、おおってるから見えないけど。
なんかいい感じだし
家の近くまで帰ってきたし、手を繋ごうとしたんだけど
振り払われた。
えーーーー
これはまだダメなの。
「人多い」
あ、そういうこと？
いつもの警戒するヤツだ。
マンションに着くと、当たり前のようにAがAの階のエレベーターボタンを押して
少しドキドキしていたけど
その階しか押さないし。
何も言わず、何事もないように
軽い到着音と共に二人でエレベーターを降りて
「あっれー。鍵どこかな………」
「開けるよ」
「あ、ありがと」
俺の合鍵を差し込んで
いつも通りAを先に部屋に入れて
そのあとドアを閉め、鍵をかける。
………感動。
といえば大袈裟かもしれないけど、
だけどそれくらい。
同じ部屋に帰れるかも心配してたし、
Aん家じゃなくて俺ん家って言われるかな？
まだ部屋には入れてもらえないかも。なんて思ってたから。
部屋に入れてもらえたってことは
これはたぶんイケる。
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作者名：しの | 作成日時：2021年4月9日 22時
