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本番まで、後三日。
歩く練習だと呼び出された教室に、尾浜さんはいなかった。
ここまで送ってくれた竹谷さんが遊びに行くと言っていたから、きっと今日はそっちなんだろう。

「もっと背中を伸ばせ」

離れた場所から見ていた立花さんから、声が飛ぶ。
高いヒールを履かされて数十分、集中力も限界だ。

「・・・休憩したいんですけど」
「なんだ、もう疲れたのか?」
「そりゃこれだけ歩かされれば」

真っ直ぐ貼られた床のテープ。
この上を、もう何十回往復しただろう。

「いいだろう、十分休憩だ」

その言葉を聞いて、近くの椅子にどさりと座った。
立花さんが、正面に座る。

「最初よりはましになったな」
「・・・まだ合格点ではないと?」
「当然だ」

立花さんは、完璧主義だ。
最初から思ってはいたが、ここ数日で嫌というほど実感した。

「今日で完璧にすれば、明日は自由だぞ」
「・・・来なくていいんですか?」
「服もメイクも決まったからな」

残ってるのは前日の最終チェックだけだ。
そう言われて少しやる気になる私は、単純だろうか。

「分かりました、頑張ります」
「よし・・・ところで」

立花さんの顔つきが変わる。

「竹谷はどうしたんだ?」
「竹谷さん?」
「いつもと違っただろう、悩み事でもあるのか?」

確かに、最近の竹谷さんはおかしい。
今日もずっと何かに悩んでて、よそよそしかった。

「すみません、分からないんです」
「そうか」
「尾浜さんは知ってるみたいですけど」
「勘右衛門が?」
「はい、聞いても教えてくれなくて」

私を見て、にやりと笑うだけ。
そう伝えると、立花さんは何かに気づいたように笑った。

「そういうことか」
「何なんですか?」
「さぁ、再開するぞ」
「立花さん」
「お前はまだ知らなくていい、そのうち分かるさ」

何だろう。
除け者にされるこの感じ。

「今教えると、お前は確実に練習に身が入らなくなる」
「・・・分かりました」

私に関係してるのか。
なら尚更、どうして。

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YATEN - すごい面白かったです!続き待ってます (2018年8月12日 16時) (レス) id: 43fd79bf09 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:なりがし | 作成日時:2015年8月3日 10時

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