【落乱】私のすくーるらいふ。 (ページ28)

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さらりと言われた、言葉。
私がいいなんて、今まで言われたことがあっただろうか。

「・・・ありがとうございます」
「こちらこそ」
「ほら、三郎」

唐突に出た名前に、私の視線は後ろにずれる。
複雑な顔をしたままの鉢屋さんが、竹谷さんに背中を押されて私の前まで進み出た。

「・・・悪かった」

目を逸らして言う謝罪に、不破さんや久々知さんは不満気だ。

「知らなかったんだよ、お前の育った環境なんて」
「知ってるの、留兄ぐらいでしたから」
「・・・ひどいこと言って、悪かったよ」

見た目には、心から反省しているように見えないけれど。
この人は、きっとこれが精一杯なんだ。

「私の方こそ、失礼な態度取ってごめんなさい」
「いや、別にお前は悪くないし・・・その、俺も・・・」
「よーし、これで全員仲直りだね！」

緩んだ空気が更に緩む、呑気な声。
ぷつんと、緊張の糸が切れる音がした。

「勘右衛門、お前な！」
「え、何？」
「もうちょっと空気を読め空気を！」

竹谷さんが尾浜さんの襟首を掴んで、乱暴に揺さぶる。
目回りそうだな、あれ。

「ごめんね、勘右衛門あんな奴だから」
「はあ・・・」

久々知さんが苦笑しながら教えてくれた。
後ろを振り返れば、まだ先輩達が暴れていて。
前を見れば、同級生達が騒いでいて。
賑やかで、楽しくて、居心地のいい雰囲気。

「・・・A？」
「あぁ、ごめんなさい」

緩む頬が抑えられない。
こんなに楽しいと感じたのは。
嬉しいと、感じられたのは。
生まれて初めてかもしれない。

「・・・笑えんじゃん」

小さく聞こえた鉢屋さんの声に、頷いた。

「よっしゃ、皆で飯でも食いに行くか！」
「小平太と竹谷の奢りで焼き肉だな」
「は！？」
「いや無理です無理です人数多いですって！」
「・・・給料、入っただろ？」
「なんでんなこと知ってるんですか中在家先輩！」
「今回稼いだって言ってたよな、八左ヱ門」
「じゃあ遠慮しなくていいってわけだ」
「三郎と兵助まで！」
「ごちそうさま」
「雷蔵！」
「八左ヱ門、任せた！」
「ちょっと自分だけ逃げないで下さいよ！」
「心配するな、私が逃がさん」
「もうすぐ作兵衛も帰ってくるから、あいつも連れて行くか」
「留三郎の鬼ー！」

わいわいと、騒がしい。
だけど。
心の奥から迫ってくるむずむずした感覚に。
苦しさも、辛さもない。

「A、行くだろ？」
「もちろん」

　留兄の問いに、私は心からの笑顔で答えた。