16 ページ18
「・・・Aは、人を信じられないのか?」
「信じたくないんです」
自分の本音なんか表に出さない。
嘘の笑顔で立ち振る舞う、人は。
「好きに、なれません」
「食満先輩は?」
「留兄は・・・あの人は、嘘なんかつけないから」
少なくとも、私に対して嘘はつかないだろう。
万が一ついたとしても、すぐに分かりそうだ。
だから、例外。
「留兄だけです、信じられるのは」
「・・・じゃあさ」
ぴたりと、竹谷さんが立ち止まる。
「俺のことも、信じてくれよ」
「・・・会って数日の人間を、信用しろと?」
「うわぁ、ちょっと傷つくなその言い方」
「・・・すみません」
「いや、いいんだけど」
そう言って、笑う。
その笑顔を見て、気づいた。
この顔は。
「ちょっとずつでいいからさ」
この、優しい目は。
「俺、お前に嘘とかつかねぇし」
この、優しい声は。
「いつでも味方になってやるから」
な?と微笑む、口元は。
七松さんにも似てるけど、それ以上に。
留兄に、似てるんだと。
「・・・頑張ります」
「おう」
「あ、そういえばさ」
「はい」
「この学部にめっちゃ可愛い子いるみたいなんだけど、知らねぇか?」
「可愛い子?」
「前に学部棟の前でぶつかったんだけど」
「・・・知りません」
真実は、言わないでおこう。
5人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
YATEN - すごい面白かったです!続き待ってます (2018年8月12日 16時) (レス) id: 43fd79bf09 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:なりがし | 作成日時:2015年8月3日 10時