お粥 ページ7
士郎)しょうがないなあ
口ではそう言うものの。
自分を頼ってくれるAが嬉しいのか、満更でもなさそうだ。
にんまりと嬉しそうな顔をほころばせている。
手慣れているのか、士郎はAの肩と腰に手をやるとスムーズに起き上がらせてくれた。
A)ありがと…
焦点が合わない重い瞼を擦りながらしばらくボーッとする。
段々冴えてきたのか「ん〜っ」と気持ちの良さそうに伸びをする。
A)……お腹空いてきちゃったぁ
士郎)マネージャーが作ってくれたお粥ならあるけど
A)食べる…!
「お粥」という単語を聞くと同時に目の色を変えるAに、士郎はクスリと微笑みながらお粥をスプーンで掬う。
士郎)はい、あーん
自然にあーん状態に持ち込む士郎。
その行動に何の不審を抱かず、素直に言う通りにお粥を口に含むA。
A)美味しい…!
ほんのりと暖かいお粥を喉に通すと食べらすいように味付けられた、優しい味が舌に広がる。
士郎もAに食べさせるのが楽しいのか、段々と食べさせるスペースが早くなる。
感覚的には雛に餌をやる親鳥のようなものだろう。
A)っ……美味しかったあ…!
スピードは落ちることなく食べ続けると、Aはあっという間にお粥を完食した。
「ふぅ…」と深いため息をつくと幸せそうに膨れたお腹を撫で回す。
士郎)ご飯もしっかり食べれたね……はい
手渡しされた体温計で熱を測ると、すぐさま結果を知らせる終了音が聞こえる。
A)37.5℃……
士郎)微熱だね…
A)でも微熱まで下がったよ!明日にはもうサッカー出来るかも…!
士郎)そういう時が1番危ないんだよ?
浮かれているAに士郎が釘を刺す。
その言葉にAは「うぐっ」と情けない声を漏らし、気まずそうに人差し指同士を突く。
するとコンコン、と扉を叩く丁寧な音が部屋に響く。
すぐさまAが出ようとするが士郎がそれを制する。
…自分が出るからAは座ったままでいい、という事だろう。
士郎)はーい
半開きのまま顔だけを覗かせた状態で出迎えるとそこには…。
風丸)なんだ、吹雪も来てたのか
士郎)うん、やっぱりAちゃんが心配だからね
タツヤ)こんばんは…A、まだ寝てますか?
倒れたAを心配したのか。
お見舞いに来た風丸とタツヤの姿が。
「起きてるよ、どうぞ」と一言言うと、扉を完全に開くと部屋に入るように促す士郎。
当の2人は女子の部屋…Aの部屋に中々踏み込めず、ぎこちない様子で恐る恐る足を踏み込む。
内心、堂々とAの部屋に入る士郎に感心を覚えていた。
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作者名：39 | 作成日時：2023年5月20日 1時
