ご褒美 ※ ページ47
そんな事を思っていると突然野坂の手がAの頭へと伸びてくる。
A)…野坂くん?
肩に顔を置いているせいでこちらからは野坂の表情は見えない。
頭を撫で続けている野坂に「どうしたんだろう」と不思議がっていると目が合う。
A)…?
首を軽く傾げていると、目を細めながらふっと野坂が笑う。
するとAの耳に野坂の顔が近付いたのか。
吐息がかかっているのが伝わる。
すると…。
A)ひゃあ?!
…ちゅっ、と可愛らしいリップ音が廊下に響く。
耳がめっぽう弱いAは変な声が出てしまい顔を熟したトマトのように赤くしてしまう。
野坂)…うん、これで良し
A)…えっ、えっ……え?
狼狽し顔を真っ赤にして言葉に詰るAに野坂は満足気に微笑む。
野坂)さあ、今度こそ戻ろうか
そんなAにはお構い無しに再び野坂がAの手を引っ張り歩く。
当のAは下を向き、戸惑いながらもその後ろを着いていく。
野坂)…顔真っ赤だね
A)のっ、野坂くんのせいだからね?!…もう、あんな冗談びっくりしちゃうから辞めてね……
冗談交じりにからかってくる野坂にAは火照りきった顔を片手でパタパタと仰ぐ。
「冗談」という言葉にひっかかり、少々顔を歪める野坂。
野坂)(本気なのにな…)
野坂)…そうだ、僕がAちゃんにご褒美を貰った事は他の皆にも内緒だよ?
A)…?どうして?
野坂)僕だけの特権が無くなってしまうからね
爽やかに微笑む野坂にAは頭の中が？でいっぱいになるが、野坂に逆らうのは怖い為ゆっくりと野坂の言葉に頷いたのだった。
ロッカールームへと戻ると「大丈夫だったか!?」「告白されたの!?」という類の言葉の嵐が投げられる。
Aにとっては意味の分からない質問が飛んできて混乱しながらも弁明していたのだった…。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
バスから降り部屋に向かっているAと野坂。
その際、野坂はアメリカであった事を沢山話してくれたのだ。
野坂)僕がサッカーを諦めたくないって思ったのは、ある人と出会えたからなんだ
A)ある人?
野坂)雨宮太陽君って言ってね、彼のお陰で僕はここに帰って来れたんだ
A)へぇ…私も会ってみたいなぁ
名しか知らぬ男の子がどんな人なのだろう、と想像するAは楽しそうに微笑む。
野坂)…本当は先生からはすぐの復帰は難しいって言われてたんだけど
A)えっ…そうなの?
野坂)でも…頑張った
そう言って笑う野坂の表情は相変わらずの無表情だが輝いて見えた。
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作者名：39 | 作成日時：2023年5月20日 1時
