眠り姫 ※ ページ5
充)…先輩?
中々一星の問いに答えないA。
そんなAに苛立っているのか。
一星は先程の消え入りそうな声とは打って変わって押しこもった声へと変わる。
充)…やっぱり先輩はアイツらの味方なんですか?
…一星の問いにAは何も答えない。
充)…っ何とか言えよッ!
痺れを切らしたかのように、一星は今まで抱きしめていたAの肩に手をのせて向き合う…が。
充)は…?
A)………………
…寝ている、とても気持ちよさそうに。
一星の話にうんともすんとも言わないのも納得だ。
当の本人はすやすやと赤ん坊のように眠っているのだから。
充)…普通この状態で寝るか?…本当に馬鹿な女だな……
口ではそう言うものの、布団をかけてあげる一星は眠っているAへと再び目を映す。
肩あたりに被せた布団をかき寄せる無邪気な仕草。
ほんのり笑みの浮かぶ愛らしい口元。
閉じた瞳をいろどる長いまつ毛も、いつもは結んでいる長い髪をおろし枕に広がっている。
まるで本物の眠り姫のように美しく見えた。
充)………
一星は自分の指を眠るAの髪を梳き下して頬に触れる。
そのまま頬を滑り降りた指先が頤を掴むと、上へと引き上げると頭がくっ付くほど顔を寄せる。
互いの吐息が触れ合う距離にまで詰め、薄く開かれたAの唇の柔らかな感触が口唇に触れた。
A)ん…っ………
苦しそうな顔をしながら眠り続けるAの頭を赤子をあやすかのように撫でる。
つくし)杏奈ちゃーん!お待たせしました!
ヨネ)これであの子のご飯が作れるよ!
その時、つくしとヨネが買い物から帰ってきた声が聞こえ思わず動きを止めてしまう。
充)……チッ…
このまま長居していればマネージャー達に見つかる。
いい所で邪魔をされた一星は険悪の形相を帯びる。
舌打ちを鳴らし深いため息をつくと一星はゆっくりと立ち上がると、何事も無かったかのようにAの部屋を出る…と。
しの)Aちゃんの部屋で何やってんの?
充)!
部屋を出ると同時にしのが立っていた。
一星はほんの一瞬、不意をつかれるがすぐにしのの問いに答える。
充)別に、可愛い後輩が先輩を心配して顔を出すだなんて普通の事ですよ?
しの)…本当に何もしてねぇんだろな?
怪しげに見つめてくるしのに一星は顔で微笑んで膝であざ笑う。
もちろん、Aにした事をしのに話す訳もない。
充)疑い深いなぁ、僕ってそんなに信頼されてませんか?
しの)仲間に怪我負わせる奴をどうやって信頼しろってんだよ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 35人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：39 | 作成日時：2023年5月20日 1時
