蒼黒色のスパイク ページ40
A)待たなーい、ゆっくりおいで?
「もーちょいで終わるから!」というしのの声を聞き流しながら、Aは女子更衣室から出る。
A)(…あれは仕方ないこと、とは言えどやっぱり心配だな…)
Aはウズベキスタンの選手達がグリッドオメガを喰らったという衝撃を未だに感じていた。
そして思い返す。
グリッドオメガを受けた時の痛みを。
ウズベキスタン選手達が力無くのたうち回っていた姿を。
A)(…いくら相手側が酷い手を使ってても、こっちも同じような事をしないで欲しい……なんて傲慢なのかな)
我儘とも捉えられる自分の考えにAの顔色は暗くなる一方だ。
その時。
俯き歩いていた時に目の隅に人影らしきものが見えた。
A)(っぶつかる…!)
この展開に既視感を感じていたAはぶつからぬように、とすぐさま後退る…が。
A)……わっ!?
変に動いてしまったせいか。
はたまた持ち前のドジがここでも発動したのか。
足を滑らせ、結局転んでしまった。
A)っ〜〜………いたぁ…
勢いよく後ろに転んでしまったせいで臀部が痛む。
A)(相手に迷惑を掛けるよりかはマシだけど…)
などと思っている時、ふいに相手の足元が視野に入る。
蒼黒色のスパイクに白の靴紐を履いている。
…顔をあげずとも分かった、ウズベキスタン選手だ。
先程まで敵対していた相手を前にAは顔をあげる事が出来ない。
A)(なんでこんなにバッタリ会うのかな……こうなったら素通りしていくか、頭下げて何も知りませんよって顔でいくか…!?)
目を落書きで書いたような渦巻き状にさせ、決意を決めたように勢いよく顔をあげる。
顔を上げるとそこにはやはりウズベキスタン選手…アナハンの姿が。
A)っ…!
だが、その姿はあまりにも痛々しいものだった。
…恐らくグリッドオメガを喰らった時に受けた怪我なのだろう。
見える範囲内でも擦り傷などがよく目立つ。
その姿を前にAは先程まであった緊張感や不安気も忘れ、思わず声を掛けてしまった。
A)あのっ…よよっ、良かったら!コレ使ってください…!
ゴソゴソと鞄から取り出した、コンパクトサイズの救急箱をそのまま差し出す。
A)えっと…包帯とかガーゼとか絆創膏もありますし、テープに綿棒と…他にも色々あるので…!チームメイトの方の分まで一応あるかと……
1段目、2段目と指をさしながら話していく。
正直、自分でも何をしているんだとは思っていたが今更口を閉じる事も出来ない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 35人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：39 | 作成日時：2023年5月20日 1時
