優しい人だから ページ4
A)…ぃち、ほ………っゴホッ!
口を開けて寝ていたのだろうか。
それとも風邪のせいなのだろうか。
Aは声を出そうとするものの。
唾を飲み込むのに骨が折れるほど喉がカラカラだ。
充)…水、どうぞ
スっとコップに入った水を差し出す一星から水を受け取ろうとする。
だが寝起きで意識と肉体が上手に繋がっていないせいか、体が思うように動かない。
充)…ほら、手貸しますよ
そう言うと一星はAの肩と膝へと手をあてて、自分の方へと引き寄せゆっくりと起き上がらせる。
少し強引ながらもその扱い方はとても優しいものだった。
一星から水を受け取るとちびちびとゆっくり水を口にし、喉の渇きを潤す。
A)ありがと……
一星にお礼を言うもののその話し方はいつもよりも幼い口調であり、手も足もまだ眠りの中にあって暖かく意識が冴えない。
いつも以上にぼんやりとしているとしているAを見つつも一星は再びAの肩へと手を回す。
一星の後頭部が近付き、優しく穏やかな匂いがAの鼻翼をくすぐる。
A)…いい匂い……ひんやり…
余程一星の香りが良かったのか。
それとも冷たい身体が心地よかったのか。
Aは一星にぎゅうっとしがみつくかのように抱きつく。
充)っ!?ちょ、っA先輩?!
顔を真っ赤にさせながら動揺はするものの。
Aを突き飛ばさないあたりを見ると一星も満更ではなさそうだ。
微かに口角が上がっているのが何よりの証拠なのだ。
充)………
一星はくびれた胴のあたりを横から抱くように引き寄せ力を込めると、ぼきっと折れるのではないのかと思ってしまう。
充)…先輩、先輩はアイツらの味方じゃなくて…ずっと俺の味方でいてくれますよね?
充)先輩は優しい人だから…俺を放って他の人のところへ行くなんて出来ませんよね
充)そんな優しい先輩なら、俺の味方になってくれますよね?…孤独な俺のそばに…ずっといてくれますよね
自分の腕の中にいるAの小さな身体を強く抱き締める。
充)俺は先輩さえいてくれれば充分なんです、先輩は俺の事…好きですか?
一星の息が吹き込んだ声を最後に部屋には静寂が訪れる。
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作者名：39 | 作成日時：2023年5月20日 1時
