あんな事 ページ23
この気まずい空気感をどうにかしたかったのだ。
充)…覚えてるんですか?
A)うん、途中で寝ちゃってごめんね?お水貰った辺りから記憶が曖昧で…
「失礼な事してなかったかな…?」と恐る恐る一星の様子を伺うAを見て。
一星は一瞬きょとんとした表情を浮かべるとすぐさまニヤリと笑う。
充)別に、大した事はありませんよ
A)ほ、ほんと?よかっ
充)でも昨日の先輩は大胆だったなあ
Aが「良かった」と言う前に、一星がわざとらしく声のボリュームを上げて被せてくる。
A)…ん?だ、だだい、大胆…?
もちろん、そんな事に全く見覚えのないAはダラダラと汗をかき慌てふためく。
充)…覚えてないんですか?
A)…ごめん、全く……
必死に思い出そうと頭に手を添えて記憶を辿っているが、やはり全く思い出せない…。
「うーん…」と唸っていると急に強く腕を掴まれた。
A)…い、一星くん?
充)酷いなぁ…昨日はあんな事したのに…
ぐっと顔を近づけられ、わざとらしく悲しげな顔をする一星にAは心臓がドクンと波打つのが伝わる。
A)あ、あんな…事…?
充)……こうやって顔を近づけて
A)…っ!
一星が掴んでいた腕を離すと、Aのえりもとが暖かくなり首元に一星の腕がふわりと回されている。
身体がこわばり背に冷や汗が流れるのが自分でも分かった。
思わず思考が止まってしまう。
充)…先輩?
…Aの様子に気付いたのか。
一星がAに抱きついたまま声をかける。
その顔は微かに憂わしげな表情に見えた。
A)っ…い、一星くん、離れて……
ぐっと一星の胸板を押して離れようとするがやはり力の差では敵わないのであろう、離れることが出来ない。
充)…先輩って男の人が苦手なんですか?
A)っ!?
耳へ触れるように囁きかける一星に、身体がビクリと大袈裟に反応してしまう。
そして同時に聞こえた。
《大丈夫…怖くないよ、怖くないから…ね?》
…あの声が。
A)そっ、そんな事ないよ、っただビックリしてるだけで
充)自分では抱きつく癖に俺から抱きついたら抵抗するんですね
不機嫌さを凝縮して、すごみさえ感じる低音にAは血の気が引く。
A)っあ…ご、ごめん…な……っお、お願いだから!離れてッ!!
思わず目をつぶり声を荒らげた…その時。
西蔭)おい、そこで何してる
充)!?
A)…に、西蔭くん?
西蔭が険しい顔をして此方を見ていたのだ。
一星も突然の西蔭の出現に驚きの思わずAから離れる。
西蔭)こんな所で何をしていた
充)…別に何もしてませんけど
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作者名：39 | 作成日時：2023年5月20日 1時
