慧星に響く歌声は3【オリオンの刻印】 (ページ17)

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風丸の不安ページ17

A)っ!……な、何の音…?

突然の破砕音に肩をビクつかせながら、恐る恐る音のする方へと顔を向ける。

そこには片膝を床につけた風丸の姿が。

その手には何か書かれている紙を持っている。

風丸の視線へと落とすとその先にはきっと落としてしまったのだろう。

大きく幾つにも分かれた皿があった。

明日人)大丈夫ですか…!?

風丸)すまん、ボーッとしてた…

A)大丈夫…?怪我はしてない?

すぐさま皆が風丸の元に駆け寄り心配の声を投げかける。

風丸)ああ、大丈夫だ…すぐに片付けないとな……

そう言う風丸だがぼんやり床の上ばかり見ている。

坂野上)俺、ホウキ借りてきます!

明日人)あ、俺も!

そんな様子の風丸に皆は心配そうに顔を見合わせると相槌を打つ。

万作)片付けは俺達がやるんで風丸さんは休んでて下さい

風丸)そ、そうか…悪いな

気の利かした万作が促すと風丸も素直にその厚意に甘える。

しの)風丸先輩、その紙って何書いてるんスか?

風丸)ああ…買い出しを頼まれてな

どうやら先程から手に持っていた物は買い物リストのようだ。

ヒロト)…暇だし代わりに行っときますよっと

不動)ったく、後輩に気ぃ遣わせてんじゃねーよ

風丸)えっ

風丸が言い終わる前にヒロトが横から乱暴に買い物リストを奪う。

その後ろには「フンッ」と鼻を鳴らしながらヒロトの後を追う不動が。

しの)おれも行くー…オラ灰崎、行くぞ

グイっ、としのに強引に腕を引かれた灰崎は露骨に面倒くさそうな表情を浮かべる。

灰崎)あぁ?……チッ

風丸を凝視すると灰崎も察したのか。

軽く舌を鳴らすと大人しく買い出しへと向かった。

まるで口裏を合わせたかのようにそれぞれが動く中、Aは顎に手を当てて勘える。

A)(…風丸くん、きっと不安なんだろうな…円堂くんも豪炎寺くんも、鬼道くんもいない今が)

昨日、しのと風呂に入っている時に話された"円堂が捕まった"という話にはAの頭もついてこなかった。

Aでさえそうなったのだから、幼馴染である風丸はより重い黒ずんだ不安が胸の奥でじっと淀んでいるのだろうと思った。

A)(…私も何か元気づけれたり役に立てれたらな……ってあれ?)

考え事から現実へと変えると先程までいた風丸の姿が何処にもない。

忙しなく首を動かすが食堂には割れた皿の片付けをする明日人や坂野上、万作たちの姿しか見当たらず。

A)……何処行ったんだろう

行方を晦ました風丸を探すため、Aは宿舎の中を駆け回ることに。