照れ隠し ページ12
しばらく3人でたわいのない話で盛り上がっていた頃。
【ﾌﾟﾙﾙﾙﾙﾙｯ…ﾌﾟﾙﾙﾙﾙﾙｯ…】
タツヤ)…ごめん、ヒロトからだ
しの)えー、無視しろよ
タツヤ)そういう訳にもいかないだろ?
A)しのちゃん……気にせずに出てあげて
しのに注意を促しながらタツヤにそう告げると、タツヤは申し訳なさそうに部屋を出ていく。
すると。
タツヤ)あっ
と、扉を開けた瞬間にタツヤの気の抜けた声が響く。
しの)どした?………うげげぇー
不思議に思ったしのがタツヤの後ろから顔を覗き込むとそこには…。
ヒロト)…あぁ?なんでタツヤがこの部屋にいんだよ
不機嫌そうに携帯を耳に押し当てているヒロトがいたのだ。
しの)あちゃあ…タイミング悪かったね
ポンっとタツヤの手に肩を置く。
タツヤ)……
見るとタツヤは焦ったかのような表現をしたままだ。
しの)(よっぽど見られたくなかったんだな)
A)なぁに?…ヒロトくん…
何事かと思いAもタツヤ達の元へ駆け寄ると納得したかのような顔でヒロトを見つめる。
ヒロト)あ?………
しかし、Aを見るなりヒロトは石のように固まってしまった。
A)…ヒロトくん?
いつもと様子が違うヒロトに近付き、目の前で手を上下に動かすものの全く反応がない。
A)タッ、タツヤ!ヒロトくん反応しない…!
タツヤ)…多分すぐに反応すると思う
しの)うん、ただショートしてるだけだから平気平気
冷たくあしらう2人の声にヒロトが反応するかのように口を開く。
ヒロト)なっ、なななっ、何部屋から出てんだよッ!
A)え?あっご、ごめんなさい…
すっかり元気になったものの。
まだ熱が残っているAはヒロトの言葉に何も言い返せず、眉を八の字にする。
タツヤ)ヒロト…Aは病人なんだから声を落としてやってくれ
しの)そーそ、Aちゃんに見惚れてれて恥ずかしいからって怒鳴んなよな
それもそうであろう…。
いつも結んでいる長い髪はおろされ、少し汗ばんでいるのが色っぽく見える。
火照りきった、程よく赤い顔に乱れている服装。
瞳は潤んで見えていつも以上に可愛らしさが強調されているのだ。
好意を寄せている人物がいつもと違う1面を見てしまい、固まってしまうのも仕方がない。
ヒロト)べっ、別に見惚れてねぇし!恥ずかしくもねぇよ!!ただっ俺様に熱が移ったら迷惑なんだよッ!!
注意されたにも関わらず大声で怒鳴るヒロト。
そんなヒロトがただ照れ隠しをしているようにしか見えないタツヤとしの。
だが、当のAは怒られているようにしか感じられずそれ以上うつむけない程に項垂れている。
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作者名：39 | 作成日時：2023年5月20日 1時
