［新･光神話 パルテナの鏡］〜牢獄少女〜

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それからというもの、私は沢山の囚人の願いを聞いた。

「此処から出してほしい」と頼んだ者がいるけど、勿論そんな願いは受け入れない。



シ「……今日の仕事は次が最後か」


今日最後に殺す囚人は、歌の女神らしい。

天使に殺される女神、か……。
滑稽な。





歌の女神「！ 貴女は……？」

牢屋の前に立つと、少し怯えたような表情で問われる。


シ「シン。お前を殺しに来た」

歌「そうですか……」


俯くその顔からは、死への覚悟が読み取れた。



シ「最後に願いはあるか？ 遺言くらいは聞いてやる」

歌「願い、ですか……」


少し考え、ならばと言うように微笑む。


歌「じゃあ、歌の事をいろいろ教えさせてください」

シ「……分かった」





その女神……ムーサは、歌について詳しく教えてきた。

楽譜の読み方、音楽記号など基本的な事から、聞いた事の無いようなややこしい専門用語まで、色々。

奏でれば自分が敵と認識している奴をトンカチにできる、なんていう気味の悪いハープもあったな。


中には、誰かをイメージしながら歌い続けるとイメージした者を呪い殺せる、なんていう物騒な歌もあった。

………いや、物騒だとかそういう話で言えば、私の方がよっぽどか。




歌「……これで、わたくしが教えたい事は全て教えました」

シ「なら、殺す」


そう言うと、歌の女神はす、と目を細めながら、こう言った。


歌「……貴女は、こんな事を続けていて幸せですか？」

シ「……もう願いは聞いた、質問には答えない」



右手と短剣に血がべっとりつく。




シ「……」



幸せ、か……？


何故だか、女神の最後の言葉が胸に響いた。

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