【名探偵コナン】好きだけどさあ…なりたいとは言ってないじゃん？

人生負け組 ページ30

降谷side

普通より鋭い歯を見せたかと思えば顔を歪めて涙を流す彼女を、心底可哀想に思った。
それと同時に幸せを掴む事が出来なかった暗い目が堪らなく愛おしくなった。
衝動的に首に噛み付く。
「あ゛っ！？痛゛ッはなッせ…やめろ！」
腰を強く抱き寄せ、後頭部を掴む。
口を離して首筋の跡をなぞりつつ低い声で囁く。


「お前俺のもんだから勝手に逝けると思うなよ？」


案の定肩を揺らす姿が可愛い。
「…ハッ、随分酷なことを言うなw」
明らかな嘲笑が鼻につく。その対象は俺の何処だろう。自分の為に他人さえ利用するところだろうか。世の中は利己主義によって成っているのだから、そんなことを嗤ったところでどうにもならないのに。
「やっぱ、無知って怖いよな？」
その微笑が悲しげで、それでいて瞳が爛々と光っている。
皮肉を含んだその言い方が気にくわない。
「俺が何を知らないって？」
「フッ、誰もお前だなんて言ってねえだろw
そうだなぁ…強いていうなら…現実？」
思わず平手が飛んだ。
ゼロが何をしているか、知らないくせに。
「お前には言われたくない。」
乾いた音を響かせた頰に手を当てて考え込むような表情をすると、急に口角をあげた。
「俺はお前に生きろと言われたくない。」そう嗤って此方に足をつけ、切ったであろう口の端しに親指を添えながら布団に潜り込み、丸まる少女。

(幸せが分からないなら、不幸さえも幸せだと思えるように強制してやろうか…。)
例えば、他者に奉仕する人間は必ず自分の所有物のうちのなにかを消費するというのに、他者に奉仕することがその人間には幸せであるのと同じように、他者にとっての不幸を幸福だと思えるように、人格さえ変えてやろうか。

そうすれば世の中の全てが幸せに思えるだろう？幸せなんて価値観の違いだから、価値観の視点を変えてしまえば、幸せの基準が変わる。
そうすれば楽になれる。
早く諦めてくれればいいのに、そう思うと、口角が上がった。
抵抗する姿さえ小動物のようで可愛らしい。

洗脳が悪だとは言うがどんなものだって使い方によるだろう。だとすれば

他者に幸福を授ける俺の洗脳は善行といって然るべきだろう？

それに、彼女が幸せを求めているなら彼女と俺は利害が一致するわけだから近くにいてくれてもいいはずだ。俺が愛してやる、幸せにしてやるから、俺に堕ちてくれ。

毎朝戦争に駆り出される俺氏→←I can fly！

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す