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遭遇 ページ9

私と中原様は、其処から押し黙って何の会話もしなかった。



私と貴方の間に空いた一人分の空席が妙に広かった。



暫くすると、私の住んでいるアパートの近く迄来たので、私は『次の信号迄で平気です』と云った。



「そうか、判った」



貴方の科白は先刻と打って代わった様に余所余所しくて、妙に申し訳なく成った。




丁度車は赤信号で止まって、マフィアって信号守るのか、と呑気な事を考えながら、




『では、私は此れで。有難う御座いました』




と、座席から立ち上がって、中原様と運転手さんに頭を下げた。




「別に構わねえよ。・・・あと、先刻色々踏み込んで悪かった」




如何やら気にして呉れて居たらしい。本当に根が優しすぎる位に優しい人だ。




『お気になさらず。今日迄御世話に成りました』




今迄の仕事での感謝も込めて微笑した。中原様は一寸苦々しげな顔をしたけれど、其れで私達の会話は最期に成る筈だった。




・・・あなたの声が聞こえる迄は。



「あれ〜、Aちゃーん!こんな処で奇遇だね〜!」




昨晩聞いたばかりの飄々とした声は、普段聞く分には嬉しいけど、今は余り聞きたく無かった。




「だッ・・・何で糞太宰がこんな処に居ンだよ!?」




中原様が、態々車から降りてきてあなた(太宰さん)の下へ駆ける。




「あれ〜、急に風が吹いて来たな〜。不思議だな〜。妖精さんの仕業かなぁ〜」




太宰さんは、中原様が視野に入らぬ振りをしてキョロキョロと辺りを見回した。




「うるっせえ!俺だよ莫ァ迦!莫ァァァァ迦!」




中原様は怒りが上限に達したらしく、中指を立てて叫んで居る。




「何だ、誰かと思えば蛞蝓か。私はAちゃんとお話したいだけなんだけど?」




「うるせえ。聞いたぞ手前、此の小娘と心中するんだろ?」



中原様は私を指差した。私は困惑して目をふわふわと泳がせた。




雨の降る清潔な路上で、何やら戦いの火蓋が切って落とされた音がした。

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☆天香☆ - 蟹江さん» ええええええっ!?(歓喜)蟹江様の作品大好きでいつもいつも笑わせて頂いて居るので、まさかそんな蟹江様が僕の小説を読んで下さるとは思わず、超嬉しいです!語彙力の塊ってそれは貴方様では・・・!?本当に嬉しいです、有難う御座います!更新頑張ります! (2019年11月3日 11時) (レス) id: a8fcda6e2a (このIDを非表示/違反報告)
蟹江(プロフ) - 貴方様の小説が読みたくて、探してみました(気持ち悪いことして本当にすみません)文才?って云うんですかね語彙力の塊ですね…!?他では見ないような素敵な作品だと思います!更新頑張ってください! (2019年11月2日 20時) (レス) id: 5573998c0c (このIDを非表示/違反報告)
☆天香☆ - アイさん» こんにちは、コメント有難う御座います!ある意味で思い切りとノリのいい夢主ですよねw万人受けするものを面白く書けない質ですので、新鮮で面白いと言って頂き光栄です!更新頑張ります! (2019年10月20日 20時) (レス) id: a8fcda6e2a (このIDを非表示/違反報告)
アイ - どうもー、天香さんの参加しているイベントの主催者のアイです!まさか、夢主ちゃんが本当に太宰と心中してしまうなんて・・・驚きです!あまりこのような作品は見ないので、新鮮でしたが、とても面白かったです!これからも頑張って! (2019年10月20日 17時) (レス) id: 2d5f8eb3ac (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:☆天香☆ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/amaka00/  
作成日時:2019年10月3日 14時

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