一喝 ページ34
僕は少し長い昔話を終えて、太宰さんの様子を窺った。
太宰さんは黙って何か考えて居る様だったが、不意に云った。
「___敦君」
「・・・何ですか?」
緊張に喉が渇く感触を覚えつつ聞き返す。
「一寸殴って善いかな?」
今度は、聞き返そうとしても出来なかった。
というのも、太宰さんが間髪入れずに僕の頬を思い切り殴り付けたからだ。
「・・・痛っ!?」
思わず呻くと、太宰さんは普段より幾分温度が下がった笑顔で僕を見た。
「敦君。君の話が余りに下らなく勝手だから、笑って仕舞うよ」
そして続ける。
「何が“彼女は僕とじゃ幸せになれない”だ?やれやれ・・・少しはAちゃんの事も考えて行動し給え」
矢継ぎ早に云った太宰さんに、僕は反論しようと口を開く。
「でも___」
「反論は善いから聞き給え、敦君」
太宰さんは僕を落ち着かせる様な口調で云ったが、彼自身が落ち着かない様だった。
「敦君は、君と関係を絶った後のAちゃんの事、知ってるのかい?」
「・・・いえ・・・」
きっと幸せに遣ってると信じてました、などと云えば、また殴られるだろう。
「なら教えよう。彼女は、ずっと君の言葉に縛られ続けて生きていた」
耳を疑った。
嘘だ、彼女は僕の彼の一言のせいで、不幸だったって云うのか?
「私は何度かあの娘と一緒に酒を飲んだが・・・酔ったあの娘が呟くのは、何時だって君の名前と謝罪の言葉、其れから「もう離さないで」という懇願だったよ」
僕は何か云うべき言葉を探そうとした。が、そんなもの到底見つかる筈が無い。
「此れでも未だ、“彼女は僕が居ない方が幸せだ”等とほざくのなら・・・本気で殴るよ」
太宰さんの冷たい目に、僕は弱々しく首を横に振った。
「ならよかった。・・・君はもう少しあの娘の覚悟を信じるべきだったね、差別対象である君に声を掛けた時点で、あの娘には後ろ指を指される覚悟はあっただろう」
其の言葉が、正直一番刺さった。僕は何時しか、世界から彼女を守らねば、と思い上がって空回りしていたんだ。
「さ、早く追い掛け給え。Aちゃんにさっさと本当の事伝えて仲直りしなさい」
打って代わった様に太宰さんの声が優しく成って、僕は驚いた。
「判らないのかい?“君でしか彼女を幸せに出来ない”のだよ。ほら、早く」
其の言葉を聞いた瞬間、僕は外へと駆け出して居た。
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☆天香☆ - 蟹江さん» ええええええっ!?(歓喜)蟹江様の作品大好きでいつもいつも笑わせて頂いて居るので、まさかそんな蟹江様が僕の小説を読んで下さるとは思わず、超嬉しいです!語彙力の塊ってそれは貴方様では・・・!?本当に嬉しいです、有難う御座います!更新頑張ります! (2019年11月3日 11時) (レス) id: a8fcda6e2a (このIDを非表示/違反報告)
蟹江(プロフ) - 貴方様の小説が読みたくて、探してみました(気持ち悪いことして本当にすみません)文才?って云うんですかね語彙力の塊ですね…!?他では見ないような素敵な作品だと思います!更新頑張ってください! (2019年11月2日 20時) (レス) id: 5573998c0c (このIDを非表示/違反報告)
☆天香☆ - アイさん» こんにちは、コメント有難う御座います!ある意味で思い切りとノリのいい夢主ですよねw万人受けするものを面白く書けない質ですので、新鮮で面白いと言って頂き光栄です!更新頑張ります! (2019年10月20日 20時) (レス) id: a8fcda6e2a (このIDを非表示/違反報告)
アイ - どうもー、天香さんの参加しているイベントの主催者のアイです!まさか、夢主ちゃんが本当に太宰と心中してしまうなんて・・・驚きです!あまりこのような作品は見ないので、新鮮でしたが、とても面白かったです!これからも頑張って! (2019年10月20日 17時) (レス) id: 2d5f8eb3ac (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:☆天香☆ | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/amaka00/
作成日時:2019年10月3日 14時